非常事態、あなたは何を持ち出す? 心安らぐ身近な物を詰めこめる防災バッグ、兵庫のメーカーが神戸学院大と共同開発

防災バッグに必要な物を考える神戸学院大生と子どもたち=三木市福井

 大規模地震の発生は、電気やガス、水道などのライフラインにも深刻な影響を及ぼす。阪神・淡路大震災はもとより、先月の能登半島地震でも断水や停電が発生した。そうした非日常的な状態が長く続く可能性を考えると、非常食など必需品だけでなく、心が落ち着く身近なアイテムも持ち出せるようにしておきたい。そのための防災バッグが産学協同で開発された。あなたなら、何を詰めますか?(長沢伸一)

 何も入っていない紺色のバッグ。兵庫県三木市別所町小林の安全保護具メーカー「基陽」と、神戸学院大学現代社会学部社会防災学科が共同開発した。

 同社は1975年の創業で、転落事故防止のため体に巻くハーネスなどを手がける。2022年から、同学科の有志でつくる学内任意団体「シーガルレスキュー」と防災のコラボイベントを開くようになり、23年には防災バッグの開発をスタートした。

 コンセプトは「自分でつくる、自分を救う防災バッグ」。同社の藤田尊子社長は「子どもにとってのおもちゃなど、災害時には普段から自分が大切にしている物も大事。自分が必要な物を考える機会にしてほしい」と意図を明かす。

 外側は柔らかいデニム生地、内側にはナイロンを採用。糸は複数の素材を混ぜた混紡製とし、耐久性を上昇させた。すぐに持ち出せるよう靴箱に入れられる大きさにもこだわり、内部には手袋やライト、常備薬など防災に関係する記号をあしらった。

 「僕はミカンが好きやからミカンがほしい」「ラジオと携帯。情報を得るため」「自分で好きなものを作りたいからお料理キット」-。昨年11月に開かれた基陽とシーガルレスキューのコラボイベントでは、完成したばかりの防災バッグに入れたいアイテムを真剣に考える小学生や幼児の子どもたちの姿があった。

 同大学2年の平川歌帆さんは「防災の固定観念を変えたい。堅苦しいものではないと提案できたら」と話す。開発に当たっては月1回のペースで会議を重ね、防災を学ぶ学生や女性の目線を盛り込んだ。生地の質感や色合い、形など、数年先でも使える柄、プレゼントしやすい物を模索した。「このバッグを通して、防災を身近に感じて日常に取り入れてもらえれば」と力を込めた。

 「自分でつくる、自分を救う防災バッグ」のデザインは3種類。同社TEL0794.82.2304

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