川の水を分析…すむ魚と量が分かるアプリ実用化へ 福井県のフィッシュパスが龍谷大学とタッグ

川の環境DNAの分析・調査の実用化に取り組むフィッシュパスの西村成弘社長(右)と龍谷大学の山中裕樹准教授=2月6日、京都市の龍谷大深草キャンパス(龍谷大提供)
開発中の環境DNA調査アプリの画面(龍谷大学提供)

 オンライン遊漁券アプリ企画運営のフィッシュパス(本社福井県坂井市丸岡町、西村成弘社長)は、川の環境DNAの分析・調査を産業ベースで実用化する事業に乗り出す。川の水を分析すれば、そこにすむ魚などの生態系が分かるアプリの開発に着手しており、漁獲の拡大や効率的な稚魚放流などにつなげてもらう狙い。2025年の実用化を目指す。

 龍谷大学(京都府)との共同事業。2月6日、同大学でオンラインを併用し記者会見を行い、概要を説明した。

⇒【写真】開発中の環境DNA調査アプリの画面

 環境DNAは水や大気、土などの中に存在する、排せつ物や粘液などによる生物由来のDNA。水中のわずかなDNAを採取して分析すれば、特定の生物がどれぐらい存在するかなどが推測できる。国内外で研究され、社会実装に向けた取り組みが進んでいる。

 龍谷大学先端理工学部の山中裕樹准教授らの研究チームは、採取した水から複数種を同時に検出する技術を確立。これまで福井県敦賀市の中池見湿地で、ドジョウと近縁種の識別と分布域の調査などに活用してきた。

 フィッシュパスは、川が抱える構造的な課題をデジタルトランスフォーメーション(DX)で解決する事業を展開しており、全国約380の内水面漁協と提携している。今事業では、各漁協が専用キットを使って川の水を採取し、フィッシュパスが福井県立大学バイオインキュベーションセンター(永平寺町)に来月設置し運営する分析センターで解析する。生物種を特定した後、スマホのアプリで魚の分布図を地図上に表示できるようにするという。

⇒「川の未来をDXで変える」フィッシュパスの戦略

 川の生態系を調べるには現状では潜水やサンプル捕獲などで行う必要があり、時間とコストを要する。環境DNA調査なら水くみだけで済み、結果のフィードバックも約1カ月という。

 フィッシュパスは全国約800の内水面漁協や環境企業などを顧客として想定。25年5月のサービス開始後、まずは4河川で事業を始める見込み。3年目に年間2億円の売り上げを見込んでいる。

 西村社長は会見で「漁協の経営資源は川の中の魚。有効に使えば漁業のあり方が変わってくる。川の未来を変えたい」と意気込む。山中准教授は「やっと使いやすいものができてきた。日本の川の生物多様性に関する信頼できる情報を蓄積し、社会的価値のあるものにしていきたい」と話している。

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