【会見全文】藤井聡太八冠(21)「意識してもなかなか目指せない。光栄なこと」 前人未到のタイトル戦20連覇

東京都立川市で行われていた王将戦七番勝負第4局。8日、藤井聡太八冠が挑戦者の菅井竜也八段を下してタイトルを防衛し、前人未到の「タイトル戦20連覇」を達成しました。これは、故・大山康晴十五世名人が1963年から1966年にかけて達成した「タイトル戦19連覇」の記録を塗り替え、新記録となりました。

以下、対局後の記者会見の全文です。

意識してもなかなか目指せない。光栄なこと

Q.シリーズ4連勝で防衛、4局振り返っての感想は?

全て対抗形の将棋で中盤戦が長い将棋になって、判断が難しいところが多かったかなと感じています。これまでは、2日制で対抗形の将棋はなかったので、王将戦で考えてみると、これまでと違った感覚を得られるところもありました。

Q.今回の防衛でタイトル戦20連覇、史上最多記録となった感想は?

記録というのは、意識はしていなかったんですけど、逆に意識してもなかなか目指せるものでもないので、光栄なことかなと思っています。これまでのタイトル戦を振り返ると、やっぱり苦しいシリーズも少なからずあったので、その中でもこういう結果を残せたのは、幸運もあったかなと感じています。

自分にとっては充実したシリーズだと言える

Q.初めてタイトルを取った当時に感じていた課題で、克服できたことを教えてください。また、まだ課題として残っているものがあれば教えてください。

当時のことはそれほど覚えていないが、まずは序盤においては当時よりも色々な形に対応する力が少しずつついてきた所はあるかなと思っています。ただ、考えていても判断がつかない局面も少なからずあるので、その点は引き続き課題でもあるのかなと思っています。

Q.大山名人を越えたが、藤井八冠にとって大山名人はどういう存在として意識してきた?

私自身は、世代的にも大山先生とだいぶ離れていて、直接お会いする機会もないので、伝説上の方というイメージはあるが、ただ奨励会時代に大山先生の棋譜を並べていたことがあって、それは主に相居飛車の将棋だったんですけど、やっぱり手厚さというのはもちろん、当時から結構先進的な将棋を指されていたのかなという印象もあって、その棋譜を並べたことは自分にとっても勉強になることだったかなと思っています。

Q.王将戦開幕まで対局の間隔が空いていたが、開幕するにあたって間隔が空くのは実戦の感じ的にどうだったか。逆に研究の時間が十分に取れた?4勝0敗は、これ以上ない成績だと思うが、このシリーズの満足度は?

開幕前は対局が少ない時期だったので、その間に対振り飛車の練習をしたりする時間はしっかり取れました。対局の間隔が空いたこともあって、第1局は少し中盤で時間を使い過ぎてしまったかなというところもあったんですけど、ただ全体として一局集中して指すことができたかなと思っています。

シリーズ全体を通してみても、2日制で対抗形の将棋はこれまで経験なかったんですけど、序盤から長い待ち時間を活かして、いままでより一手一手考えて指していくことはできたかなと思うし、自分にとっては充実したシリーズだと言えるかなと思っています。

コンディションを崩さずに戦っていけたのは、手応えのある結果

Q.立川での王将戦も4年目。達人戦も始まって、将棋の街になったらいいと思うが、市として将棋を指す人や見る人が増えるようなアイデアがあれば教えてください。今回の対局地の「オーベルジュときと」は、地元の人も憧れの場所だが、居心地はどうだった?

立川市は、本当にここ数年、毎年王将戦の対局を開催していただいていて、私自身は今回で3回目だと思いますが、盛り上がりを実感しています。今年からは達人戦も決勝戦をはじめとする対局を開催されていて、こちらは公開対局だったと思いますが、それも合わせていろいろなイベントも開催していただいて、すごく立川市に勝利を間近に感じている機会になったかなと思いますし、ぜひ今後も続けばいいなと思っています。

対局場の「オーベルジュときと」様は、昨年新しく開業されたということで、本当にすごくいいところだと聞いていたので、私自身も楽しみにしていたんですけれども、実際に伺ってみると期待以上というか、すごく洗練された雰囲気があって、お食事もとても美味しくて、素晴らしい環境の中で対局させていただいたと思っています。

Q.去年のタイトル戦を振り返って、藤井八冠は、菅井八段との叡王戦を課題として挙げていたような印象があるが、今回菅井八段とタイトル戦に臨まれるにあたって意識したことや、功を奏したことがあれば教えてください。

叡王戦では、序盤でペースを握られてしまう将棋があったり、またそうでなくても、中盤の難しい局面で急所が掴めずに時間を多く使ってしまったりということがあったので、今回の王将戦にあたってはその点を意識して、練習将棋で対抗形の経験を積んだり、序盤の叡王戦の時よりも深く考えたりということをして臨みました。それが、今回生きたところもあったのかなと思っています。

Q.今年最初の防衛戦で防衛されたが、いいスタートを切れたというような手応えや所感があれば教えてください。

これまで対局の間隔が空いたときに、少し内容の良くない将棋を指してしまうことが多かったので、今回は対局が少ない状況で対局を迎えましたが、大きくコンディションを崩さずに戦っていけたのは、手応えのある結果だったかなと思っています。

Q.去年、八冠達成した後あたりから少しずつ戦法の幅を広げたい、玉を増やしたいという発言をしていたが、第4局はご自身から、角を交換して乱戦に持ち込むという今まであまりされていなかった指し方だったと思うが、そういった意識があったのか心境は?

あまり自分自身も本局は経験のない形だったんですけど、序盤でこちらが一歩、得するような形になるので、それを活かすことができたら面白いのかなという気持ちもありましたし、待ち時間の長い将棋だったので、力戦というのもあっているかなと考えたところもありました。

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