ゲノム医療新時代 ~私たちの生活と意識はどう変わる?~ CancerXから

みなさん、ゲノム医療ってご存じでしょうか?
まだまだなじみがなく、正確に説明できる方も多くないかもしれません。
しかし、病にり患した方はかなり聞く言葉であり、これに対する正しい理解が必要になってきています。

ワールドキャンサーデイ に合わせて行われたCancerX 「World Cancer Weel 2024」
https://cancerx.jp/summit/wcw2024/program/

気になるセッションの中から、CancerX ゲノム ゲノム医療新時代 を取り上げます。

聖路加国際大学聖路加病院 遺伝診療センターの認定遺伝カウンセラー 鈴木美慧さんがモデレーターのセッションです。

パネラーは文系から医療をよくしたいと話す、東京大学医科学研究所教授の武藤香織先生。

一般社団法人ピーペックの宿野部武志さん。

3歳のときに慢性腎炎をり患、入退院を繰り返し、18歳からは人工透析を週3回続けており、腎臓がんも体験されている宿野部さん。
患者会とライフサイエンス企業・医療者をつなぐ架け橋として患者さんの声を医療に届ける活動をされています。

メディアの立場からは

QLife編集長 遺伝性疾患プラス編集長 医学博士でもある 二瓶秋子さん。
大学教員・研究員もされてから、キャリアチェンジしたというご経歴をお持ちです。

https://cancerx.jp/summit/wcw2024/program/

日本でもようやくゲノム医療推進法が2023年に制定されました。良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策や総合的かつ計画的な推進に関する法律、です。

武藤先生は『がん遺伝子パネル検査を経由して実際に投薬に結びついたのは10%に満たない』と指摘。

『どう広げるかは課題であり、最大の懸念は人が差別されたり、不利益が起きるような社会になってはいけない』と問題提起されました。

1997年にユネスコで出されたヒトゲノムと人権に関する世界宣言を例示されました。

第1条 ヒトゲノムは人類社会のすべての構成員の根元的な単一性並びにこれら構成員の固有の尊厳及び多様性の認識の基礎となる。

象徴的な意味においてヒトゲノムは、人類の遺産である。

第2条
(a)何人も、その 遺伝的特徴の如何を問わず、その尊厳と人権を尊重される権利を有する。

どんな遺伝的特徴でも尊重される社会ではなくてはなりません。
日本はしばらく法制化の波は起きませんでした。

2023年、超党派の議員連盟、医療者、患者のみなさんの働きかけでゲノム医療推進法に結びつきました。

ゲノム医療推進法の基本理念の第3条の三には
当該ゲノム情報による不当な差別が行われることのないようにすること』と明記はされています。

しかしながら、一般的に『ゲノム』という言葉はまだまだ理解されていません。

根拠がないけど、よく『がんになったのは遺伝のせいだ』『がん家系』などと言われます。

私自身もその経験があります。

現に父も胃がんで亡くしましたし、母も乳がんで私も乳がん。

遺伝じゃないの?と聞かれますが、現時点では乳がん卵巣がん症候群(HBOC)とは診断されてはいません。(インコンクルーシブ)
HBOCだけが遺伝性ではないので、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。

武藤先生は『適当な言葉が人を傷つける。そして研究によってゲノムの解釈は揺れ動く』ことをお話されました。

私自身、もやもやしていたものが少し言語化されました。

基礎医学の研究者としての医学的バックグラウンドをお持ちの二瓶さん。

『遺伝性疾患に関して診断後に病院で受ける説明は、短期間では理解が難しい。

ネットとSNSの情報は玉石混交。不安や誤解が広がるので(QLife・遺伝疾患プラス)サイトで解決してほしいという思いがある。誤解や偏見による苦悩を抱えることなく過ごすことが大事で病院で受けた説明を十分に理解した上で納得して治療に臨んでほしい』と話しました。

二瓶さんからはサイトに寄せられた遺伝に関する差別的な偏見などについての読者の声には今これ?というものも紹介されました。

結婚を破断された

家から出してもらえない

遺伝性疾患であることを知られたくないため、患者会から送られてくる封筒には差出人を書かないでもらっている。

病気の子供が生まれたらどうすんだよ、と言われた。

まだこうした現状があります。
私もそうした声を聞いてきました。胸が痛いです。

法律ができて・・・・

武藤先生は『いいことからいうと、できたことで難しい点を話せるきっかけになったことが大きい。できたけど、中身がからっぽなのでここから本気度をどう詰め込んでもらえるのかが重要。しつこく現場の声を届けて、全体的にバランスよく推進してほしいと思っている。』

法律ができて、変わってきたことは?

患者でもある宿野部さんは
『まだまだ正しい知識が理解広がっていない。私自身もわかっているとはいえない。不安や悩みを抱えた人にどうサポートするか、一緒に考えていきたい。』としたうえで問題を提起されました。

『究極の個人情報の機密性が守られるか、という点もあるが、一方で医療データに患者・国民がアクセスできていない、ということもある。
自分の医療データに関して過去を遡ってみれない。医療の進歩と意識との乖離が生まれている。』とし、啓発するのも大変だなと感じていると活動の苦労も語りました。

『ゲノム情報自体はもうみな、持っているもの。さらに高血圧や糖尿病も生まれ持った体質が背景にあるものがあることもわかってきた。感情よりも先に進む研究。自分事じゃない方にどう伝えるか。』とモデレーターの鈴木さんも指摘します。

『タイムリーに主体を置いているところが多い中でスピードが落ちても丁寧な情報発信、と注力している』という二瓶さんに

『SNSはタイトルがキャッチーとかセンセーショナルになってきている。』と鈴木さんは指摘。

『ゲノムや疾患についてはより丁寧にということが多くのメディアに浸透していくといい。』と同意しました。

差別という感覚に対して・・・

武藤先生『そんなひどいことあるの?もっと怒ればいいのに、と思う。仕方ないと思っている人が多い。怒っていい、ひどいと言っていいということを知ってほしい。差別する側の人も自分の一言がどれだけの人を追い詰めるのかを知ってほしい』

宿野部さん『どの病気でも起こる。子供のころに差別を受けて、爆発したことがある。トラブルとなり、より周囲との距離を感じてしまって、それ以来表に出さなくなった。SNSでは負の連鎖となる。正しい形で差別に反論する。正しい在り方が通じる世の中であってほしい。』

武藤先生がおっしゃった『お互いさまだよね、と共通認識として持つことが大事。原点に返ることが大事だと思う。』が広がればいいな、と。

私も伝えていかねばと感じます。

二瓶さん『理解しやすい形での情報発信は手がかりになると信じている。メディアは中立的立場であるので、同じ事柄でも違う角度からの情報を集めることが
できる。苦い事実も事実として伝えていく、という積み重ねがつながると思う。』

二瓶さんの言葉は重い、です。

調べていたり、お話を聞いていくと必ずしもいい話ばかりではなく、自分自身でどう受け止めるか、そしてほとんどその知識がないひとたちに伝え方を迷うことが多い。

私自身も実感しています。

今年のCancerXのテーマは『問いは、はじまり。』

ゲノムについて考えることはまだスタートラインについたばかり、です。

阿久津登壇イベント

__2024年3月6日(水)19:00〜 \(1時間\)
登壇者:阿久津友紀 __

__受講料:無料 定員30名(抽選)
対象者:がん患者様、がんご経験者様、ご家族
内容: アピアランスケア【Make-up__】

申し込み締め切り:2024年2月18日(日)15:00(応募者多数の場合、早く締め切ることがございます)

https://cancergift.co/2024womansday/

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