新幹線「パーサー」の秘密基地に潜入 ワゴン販売の終了で600人のパーサーはどうなった?

2023年10月、60年の歴史に幕を下ろした東海道新幹線の「ワゴン販売」。全長400メートルの新幹線を往復していた「パーサー」の皆さんは、その後どうなったのでしょうか。関係者でなければ入ることができないパーサーたちの「秘密基地」に大石邦彦アンカーマンが潜入しました。

接客のプロ「パーサー」の秘密基地に潜入!

年間1億6800万人が利用する日本の大動脈「東海道新幹線」。世界に類を見ない安全性と快適さを支える仕事が「パーサー」です。

東海道新幹線の西の玄関口、1日8万人が利用する巨大ターミナル・新大阪駅の片隅に、パーサーたちの「秘密基地」があります。案内してくれたのは、この道9年のベテラン・由永紗希さん。

新幹線の車内をくまなく巡回し、乗客の困りごとにも対応するのがパーサーと呼ばれる乗務員。普段、決して目に触れることのないパーサーの拠点の中を歩いていると、廊下に全身が映る大きな鏡が。

(パーサー・由永紗希さん)
「ちょっとでも不潔なところが見えてしまうと、嫌な印象にもなってしまうので。見られる仕事なので、そこは気を付けて」

身だしなみに厳しいパーサーですが、廊下には靴磨きのセットが置かれたコーナーも。

(パーサー・由永紗希さん)
「出発する前にここでみんな足をきれいにして、ピカピカにして出発しています」

JR東海のグループ会社で働くパーサーは約600人。始発や終電を担当するパーサーのために、仮眠室も用意されています。時間に厳しい仕事上、目覚ましが2つ設置されているなど、様々な工夫がされていました。

世界有数の正確な運行を支える職員たち

パーサーの拠点は東京駅と新大阪駅にあり、出発前と到着後、手荷物のチェックやサポートが必要な乗客の情報などを共有します。次から次へとやってくるパーサー。これから乗務する列車の出発時間や、身だしなみなどを細かく指示しているのは、当直長の遠藤由紀さんです。

(当直長・遠藤由紀さん)
「(Q心掛けていることは?)時間ですね。狂ってしまってはいけないので」

午前6時から午後11時49分まで1日378本の新幹線が運行、それでも1本あたりの遅れはわずか12秒と、世界有数の正確な運行を誇る日本の新幹線。わずかな遅延も許さないため、遠藤さんは、プライベートでも時間に極めて厳しくなり、時間前集合が身についているとか。

一方、入社1年目の柚木萌花さんは、ある業務へのあこがれからパーサーを志しました。

(入社1年目・柚木萌花さん)
「接客をするのがすごく好きだったので、ワゴン販売をやりたくてこの会社に入ったんですが…」

東海道新幹線は2023年10月末、60年続いた車内のワゴン販売が終了。とてつもない硬さが人気だった「スゴイカタイアイス」は、ワゴンから駅のホームに売り場を移しています。ワゴン販売終了した背景には、駅周辺に飲食店が増えて売上が低下したことに加え、多くの業種で深刻化する「人手不足」もありました。

グリーン車限定の新サービスが誕生!制服もリニューアル

ワゴン販売は終わりましたが、新幹線の快適さや安全性にさらに磨きをかけています。

(今北泰之人事部長)
「世界最高の接客サービスがあるということを前面に打ち出して、そこにやりがい・魅力を感じていただける方がたくさん来ていただければ」

パーサーの訓練の場が、モックアップ室と呼ばれる部屋です。新幹線の客席を再現しており、ここで実際の車内を想定して研修を行います。ここでは、グリーン車向けに始まった「新たなサービス」の訓練を行っていました。

それが、グリーン車の乗客がスマートフォンで座席に設置されたQRコードを読み込めば、欲しいものを好きな時に注文できるサービスです。

(パーサー・由永紗希さん)
「『乗ってすぐ』『富士山が見える前』など、お客さまが欲しいタイミングでご注文いただけるということがメリット。あとは私どもも余裕を持ってお客さまのところへ持っていける。WIN-WINなのかなと思います」

さらに、「最高のおもてなし」を目指すパーサーは、制服も去年リニューアル。外資系のホテルをイメージして作られました。

車内のあらゆる出来事に対応!高いプロ意識を持つパーサー

さらにここで、これまで100人以上のパーサーを育てたインストラクター・恩地杏奈さんに、大石アンカーマンを見習いパーサーに見立てて指導してもらいました。

早速、大石アンカーマンがグリーン車にコーヒーを運ぶ業務を体験しますが、挨拶から厳しい指導が入ります。

(インストラクター・恩地杏奈さん)
「ちょっと違います。お客さまの空間にお邪魔させていただきますという気持ちを込めて、『失礼いたします』」

なんとか一連の接客をやりきりましたが、恩地さんからは指摘がいくつも…
パーサーはこうした研修を何度も繰り返し、より良い接客を学んでいきます。

接客以外にも、車内アナウンスや不審物への対応、さらに海外からの乗客の案内など、車内で起きるあらゆる事に対応しなければならないパーサー。一連の対応を終えた大石アンカーマンに乗客役の次長は太鼓判でしたが、指導役の恩地さんは…。

(インストラクター・恩地杏奈さん)
「細かく言っていくともう朝までかかってしまうので…。どれ一つ欠けてもパーフェクトなサービスとは言えませんので、ぜひパーサーの動きを見ていただいてサービスを極めていただけたらなと思います」

「高速化」「大量輸送」で、60年、日本の経済をも支える東海道新幹線。還暦を迎えてなお、より快適でより安全な足として進化を続けています。

CBCテレビ「チャント!」1月31日放送より

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