三者三様!金融業界に影響を与え続ける“世界三大投資家” の手法と哲学とは?

日本では去年の物価の変動を反映した、働く人1人あたりの実質賃金が2年連続で減少しました。インフレに賃金の伸びが追いついていない状況です。新NISAの追い風で証券会社の口座解説数も伸びているようですが、「新NISAという商品が欲しい」という問い合わせもあるとのことで(新NISAは制度であって商品ではない)、投資をする際に投資を学ぶ必要性も高まっていると言えます。

そこで今回は“世界三大投資家”と言われる投資で大成功した方々の手法や考え方と、投資を学ぶ重要性について簡単にお伝えします。彼らは幼い頃から投資に取り組み、天才と言われていますが、長年の経験を踏まえた今なお通用する手法や考え方を持っているといえます。


“投資の神様”ウォーレン・バフェット氏

“投資の神様”や“オハマの賢人”と呼ばれるウォーレン・バフェット氏は1930年生まれで現役の投資家です。バフェット氏はアメリカの歴代大統領に影響を与えるほどの影響力を持ち、世界有数の大富豪でありながら、富の大半を慈善事業に投じたり人々の尊敬を集める生き方をされています。

ウォーレン・バフェット氏の投資手法は非常にシンプルで理解しやすいものです。以下に、彼の投資哲学を簡潔に説明します。

1.長期投資を行う
バフェット氏の最も重要視するポイントは、長期投資です。彼は「バイ・アンド・ホールド」のスタンスで、一度株を購入したら、それを長期間保有し続けることを強調しています。市場の短期的な波に左右されず、安定的な資産の増加を追求します。

2.価値のある企業に投資する
バフェット氏は企業の価値を評価し、将来的にその価値が高まり続ける企業に投資します。彼の投資スタイルは「バリュー投資」と呼ばれ、企業の実際の価値を考慮して、株式が割安であるときに投資を行います。独自性のある企業に焦点を当て、その企業が市場で競争力を維持できると判断します。

3.よく知らないものには投資しない
バフェット氏は、自分が理解できない投資には慎重です。彼は自身が十分に知識を持つ分野に投資し、投資対象について深く理解します。よく知らないものに投資すると、リスクが高まり、投資の失敗が起こりやすくなると考えます。

バフェット氏は、単純明快な投資哲学を実践し、その結果、数十年にわたり驚異的なリターンを収めています。精査した上で少数の銘柄に投資を集中させることで大きなリターンを得たわけです。

投資初心者にとっては、全世界型や全米型などの指数に投資を積み立てるようなかたちで複利を得る投資法が王道だと思いますが、バフェット氏のようなスタイルもあることを覚えておきましょう。

バフェット氏はバークシャー・ハサウェイという投資会社の経営者で、バークシャー・ハサウェイの投資家ポートフォリオは組み換えがあるたびに話題となります。日本の5大商社株を買ったことはニュースにもなりましたし、日本株全体にも影響を与えました。調べてみると皆様の投資の参考になるかもしれません。なお、米国個別株としてバークシャー・ハサウェイに投資をすることもできますので、気になる方は調べてみてください。

“冒険投資家”ジム・ロジャーズ氏

ジョージ・ソロス氏と共に“史上最強のヘッジファンド”と言われるクォンタム・ファンドを設立。旅好きで“冒険投資家”と呼ばれる投資家。ジム・ロジャーズ氏の投資手法は、その独自性に特徴があります。

1.変化を掴む
ロジャーズ氏は、投資の契機として何らかの大きな「変化」を掴みます。これは通常、社会や経済における従来とは異なる変動です。

2.トップダウンアプローチ
彼はトップダウンの視点から投資対象を決定します。国、業種、企業の順で考え、投資先を選定します。

3.自分の知識を生かす
ロジャーズ氏は、自身がよく知る対象に投資を重ねることを好みます。情報の豊富なアニュアルレポートや企業の公式情報を丁寧に読み込み、深い洞察を得ます。

4.割安を追求
彼はできるだけ「割安」な投資対象を選ぶことを心がけます。しかし、彼にとって割安とは、市場で不人気であることや放置されていることに価値を見出すことでもあります。

5.ロングショート戦略
ロジャーズ氏はリスクを管理するために、ロング(買い)とショート(売り)のポジションを同時に持つ「ロングショート戦略」を取ります。これにより、リスクを分散させつつ利益を積み上げます。

6.仮説・検証サイクル
彼は投資を行う際、仮説を立てて小さな取引から始めます。仮説が正しい場合、ポジションを拡大しますが、誤った場合は検証し、修正や損切りを行います。このサイクルを繰り返すことで、リスクを最小限に抑えながら成果を追求します。

7.グローバル・マクロ運用
ロジャーズ氏は世界中の金融市場をマクロ経済の視点から分析し、価格と市場の乖離を見つけ出します。このアプローチにより、市場の歪みを利用します。

8.商品投資
また、株式投資に加えて、商品投資も勧めています。彼は世界的なリソースの動向に注目し、商品市場も積極的に取り組んでいます。直近ではインフレを背景に有望な投資対象としてコモディティーを挙げています。

ジム・ロジャーズ氏の投資スタイルは「割安」と「変化」がキーワードとなっていて、その独自性が成功の要因とされています。市場の歪みを見つけ、リスクを管理し、長期的な成功を追求する投資家にとって興味深いものです。

ジム・ロジャーズ氏は1942年生まれで、早期(37歳)で引退をしており、FIREの先駆者といえるかもしれません。また米国株の上昇といった「良い時代の終焉が近づいている」と昨年末に指摘しています。

“イングランド銀行を潰した男”ジョージ・ソロス氏

数々の伝説を残した投資家です。前述のジム・ロジャーズ氏と1973年から運用を開始したクォンタム・ファンドが10年間で40倍以上に価格上昇したとされています。多額のポンドの空売りを仕掛けて利益を出した一方で、英国中央銀行は通貨防衛策をとったもののポンド危機に陥ってしまったことで、“イングランド銀行を潰した男”との異名も。1930年生まれ、ユダヤ人としての壮絶な経験をされた方でもあります。

頭がよりクリアな朝に重大な決断をするべきだという信念をもち、大きな投資の決断などは朝に行ったとも言われています。そんなソロス氏は少子高齢化の問題などから日本の将来については悲観的です。

ジョージ・ソロス氏の投資手法は“再帰性理論”を基盤としています。この理論には以下の要点が含まれています。

1.予想と現実の相互作用
ソロス氏は、人々の意思決定が予想に基づいて行われる一方で、その意思決定が現実を変化させ、新たな予想を生むという循環的なプロセスが存在すると主張しています。このため、予想と現実は常に予測不能であり、不確実性が存在すると考えています。

2.市場の歪み
ソロス氏は市場における価格は、投資家たちの主観的な予想によって形成され、その予想は常に不完全であると認識しています。市場の歪みは、予想と現実の相互作用によって生じ、これにより市場価格は時折、実際の価値から逸脱することがあります。

3.投資家のアクションと市場への影響
投資家たちの行動や取引が市場に影響を与え、市場の動向をさらに不確実にする要因となります。ソロス氏は、市場の歪みを認識し、それに対して適切な行動をとることで、利益を上げる機会があると信じています。

ソロス氏は、イギリスのポンド危機などの歴史的な事例を通じて、市場の歪みが発生した場合に、その特性に合わせた投資行動を通じて成功を収めています。市場が不完全であること、投資家の予測が常に正確でないことを理解し、その歪みを利用して市場の動向を予測することが大きな利益を上げることにつながるようです。

日米間の為替相場と通貨供給量の比率に相関があるとして日米の中央銀行の通貨供給量を比較した “ソロスチャート”というものもありますので、気になる方は調べてみてください。

ソロス氏は2011年にファンドの運用からは引退。市場の再帰性など、思想を伝えたり慈善活動もされています。

達人たちに学ぶ意義

三大投資家の手法を見ると、彼らはリスクを評価しリスクヘッジの戦略を確立する能力に長けていることがわかると思います。知識と戦略を持つことで、投資に伴うリスクを把握し、それをコントロールできます。そして財務計画を立て、市場トレンドや産業の動向を把握できるよう学べば、未来の成長分野や投資機会を見つける能力が身につき、感情に左右されない合理的な意思決定ができるようになるでしょう。

また投資において長期的な視野を持つこと、投資学習を通じて、短期の市場のボラティリティに振り回されず長期の成果を追求することを長期投資では考慮した方が良いでしょう。
加えて、さまざまな資産クラス(株式、債券、不動産、コモディティなど)を理解し、どの資産クラスが自分の投資目標に適しているかを知ることは、ポートフォリオの多様性を高め、リスクを分散するのに役立ちます。株だけにこだわらない方がよいかもしれません。

投資学習は、失敗を減らし成功の確率を高めるために欠かせないステップです。三氏のような投資の達人から学ぶことは、その知識や経験を取り入れ、自身の投資戦略を洗練させるために非常に有益です。投資は学び続けるプロセスであり、その学びを通じて賢明な投資家となることができます。この学びは一生使える学びです。ぜひご一緒に投資道に邁進していければと思います。

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