「野生に戻ったようによく食べた」…大井町の企業がシカ肉のペットフード開発、駆除肉を有効活用

ディアワンのペットフードを持つ井上社長

 農作物を荒らす有害鳥獣として駆除した野生動物の命を有効活用しようと、神奈川県大井町のエクステリア会社が畑違いともいえるシカ肉を利用したペットフードを開発し、販売を始めた。同社は「奪った命を簡単には捨てられない。もっと商品開発して活用率を上げたい」と話す。

 県西部で門扉や庭などの外構工事を手がける「キャドエル」は昨年7月、ペットフード製造・直売店「ディアワン」(同町山田)をオープンした。駆除されたシカを材料にしたジャーキーなど犬用のペットフードを販売している。

 同社の井上直哉代表取締役(47)が松田町でミカン栽培をしている友人からシカ害の相談を受けたことがきっかけだった。最初は「捕獲してはどうか」と軽い気持ちで提案していたが、“有言実行”しようと一昨年の秋にくくりわなの免許取得を決意。有害鳥獣の捕獲から解体までを行っているNPO法人「おだわらイノシカネット」と小田原市が共同で開いている「小田原くくり罠(わな)塾」に途中入塾した。

 同法人が同市久野地区を中心に設置するわなでの実施研修で、井上さんが驚いたのはかかるシカの数だった。夏場は7、8頭もかかっている時があった。肉は基本的に参加者の自家消費となるが、余って埋設せざるを得ないときもあるという。以前、シカの骨を飼い犬に与えたところ「野生に戻ったかと思うほどよく食べた」(井上さん)ため、ペットフードに活用できないかと考えるようになった。 

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