「青森の雪が見たい」訪日客数コロナ前水準まで戻る 中国SNSの県公式フォロワーは130万人に

午前中から多くの訪日客らでにぎわう八甲田ロープウェー=10日

 新型コロナウイルス禍が収束し、観光客の動きが回復してきた青森県内。冬期間は本県観光業にとって閑散期とされてきたが、雪国ならではのアクティビティーや景色を求めて多くのインバウンド(訪日客)が訪れている。10日から中国の旧正月に当たる春節の大型連休も始まり、一部の施設では訪日客による「冬の繁忙期」を迎えている。

 好天に恵まれた同日、青森市の八甲田ロープウェーでは、スキーやスノーボード、そして樹氷を楽しもうと多くの客が山麓駅で列を作っていた。そのほとんどが訪日客だ。台湾から初めて青森県を訪れたという自営業シュウ・コウセイさん(43)は「こんな良い天気の中で樹氷が見られて文句なし。最高」と笑顔。雪にまみれて家族と写真を撮っていた台湾の学生チウ・ユータンさん(17)は「青森の雪が見たくて来た。すしも焼き肉もおいしい」と旅を満喫していた。

 同社事業部の菊池智明次長は「訪日客はコロナ禍前の水準まで戻りつつある」とにぎわいの回復を実感。その上で「以前はスキーなどが目的の欧米人や韓国人が多かったが、最近は樹氷目当ての台湾やタイなどからの観光客が目立つ」と語る。

 観光庁の調査によると、青森県の月別外国人延べ宿泊者数は、コロナ禍前の2019年と23年でいずれも10月が最多。19年は、冬期間と夏祭り期間の宿泊者数に大きな差がなかった。また、県が発表した23年12月の月例観光統計調査(速報値)では、県内主要宿泊施設における外国人宿泊者数は延べ1万1727人で、19年同月を0.5%上回った。

 県は、県内外の観光客向け情報サイトを22年にリニューアル。サイトは5カ国語に対応し、各国出身のライターによる旅行記や旅のモデルプランを掲載し、定期的に情報発信している。

 五所川原市の津軽鉄道が運行するストーブ列車は、同サイトで人気を集めている体験の一つ。同社によると訪日客は回復傾向で「特にアジア圏の客が多い」という。青森市の酸ケ湯温泉では、大韓航空のソウル線再開の効果も見られ、韓国人観光客に復調の兆しが見られている。同温泉は全国有数の豪雪地に囲まれていることもあり、宿泊営業課国際プロジェクトリーダーの高田新太郎さんは「ここは冬の方が繁忙期」とうれしい悲鳴を上げる。

 県誘客交流課の佐藤宏課長は「台湾・エバー航空のチャーター便やソウル線再開が訪日客回復の弾みになっている。青森県の魅力発信を続けながら、訪日客のさらなる拡大につなげたい」と話す。

▼ウェイボのフォロワー130万人「実感まだ」

 10日から大型連休・春節が始まった中国の交流サイト(SNS)「ウェイボ」で、青森県の公式アカウントのフォロワー数が130万人超と青森県人口を上回り、注目を集めている。しかし、実際に訪日客を迎えている県内の観光施設からは「中国人が多い実感はまだないのだが…」と戸惑いの声も聞こえる。

 県は訪日客向けに、ウェイボのほかフェイスブックなどのSNSを使い、各国の言語で定期的な情報発信を続けている。県誘客交流課はウェイボのフォロワー数について「爆発的というより、緩やかに伸びている状況」と説明。「130万人全員が本県を訪れているわけではないので、これまで通り丁寧に情報発信したい」と冷静に受け止める。

 青森市の「ねぶたの家ワ・ラッセ」スタッフの若佐谷大樹さんによると、同施設を訪れる訪日客は新型コロナウイルス禍前の水準に戻ったが、その7~8割は台湾人。津軽鉄道(五所川原市)のストーブ列車でも「台湾からの団体客が多い」(担当者)という。

 実際、観光庁のまとめによる青森県の2023年外国人延べ宿泊者数は、国・地域別の構成比で台湾が35%と最多。一方、中国は香港(13%)に次ぐ12%で、コロナ禍前19年の19%から減少しており、現時点で青森県に“殺到”という状況には至っていない。

 若佐谷さんは「フォロワー数が示すように、たくさんの中国人客が足を運んでくれればうれしい」と今後に期待を寄せる。

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