ライバル企業も手を組む時代 本州最北端・青森県下北半島で大手運送業者やドラッグストアが共同配送

ハッピー・ドラッグの商品を積んだトラックの荷台に、ツルハドラッグの荷物を加える運送業者=1月、青森市合子沢の物流センター
西濃運輸盛岡支店に到着する佐川急便のトラック=2023年7月(佐川急便提供)

 大手の運送業者やドラッグストアが本州最北端の下北地域で、企業の枠を超えて同じトラックで商品を運ぶ「共同配送」に取り組んでいる。運転手の残業規制強化で輸送能力の低下が懸念される「2024年問題」を見据え、過疎地域の物流網を効率化するのが狙い。トラック1台当たりの積載率を高め、車両台数を削減するなどの効果を上げている。

 1月25日午後9時過ぎ、青森市浪岡にあるドラッグストア大手「ウエルシアホールディングス(HD)」(東京)関連の物流センター。下北地域の同社グループ店舗「ハッピー・ドラッグ」に納品する食品、菓子などを積んだ10トントラックが出発した。

 トラックは約30~40分後、ドラッグストア大手「ツルハホールディングス」(札幌市)の商品が保管されている青森市合子沢の物流センターに到着。同社店舗向けの荷物を荷台に加え下北地域に向かった。

 下北地域にはハッピー・ドラッグ6店舗、ツルハ5店舗の計11店舗が立地し、両社は以前、青森市からそれぞれ商品を配送していた。ただ、人口が少ない過疎地のためトラックの積載率が低く、店舗間の距離も離れており「非常に配送効率が悪かった」(ウエルシアHD)。

 共同配送は22年11月に開始。約6~7割だった積載率は8割以上に向上、配送に必要なトラックの台数も従来に比べ3割程度減ったという。

 ウエルシア薬局商品本部の西野利明物流部長は「ドラッグストアには住民生活を支える役割があり、簡単に撤退できない。山陰地方などでも共同配送の導入を検討していく」と話す。

 佐川急便(京都府)と西濃運輸(岐阜県)の大手運送会社2社も23年7月、下北地域向けの荷物を集約する共同配送を始めた。西濃運輸が佐川急便に配送業務を委託。佐川急便のトラックが岩手営業所(盛岡市)を出発した後、西濃運輸盛岡支店で同社の荷物を混載し、佐川急便下北営業所(むつ市)を経由し住宅や事業所に届ける仕組みだ。

 物流拠点間の幹線輸送だけでなく、物流拠点から最終目的地に届ける「ラストワンマイル」まで共同配送で対応するのは両社にとって初の試み。佐川急便は3割程度だったトラックの積載率を4割程度まで改善、西濃運輸は下北地域の輸送に使用していたトラック3台と運転手を他地域に配置できるなど、双方にメリットがある。

 佐川急便事業開発部の佐藤諒平担当部長は「配送効率向上による経営改善は運転手の待遇改善、人手の確保につながる」、西濃運輸輸送品質部の大澤孝光部長は「到着時間など輸送の質を下げることはできないので、輸送形態を変える必要があった」と語る。

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