全国最優秀賞に那須塩原・埼玉小の前野さん 交通安全作文コンクール 「兄のように勇気ある人に」

内閣総理大臣賞受賞を福田知事(左)と難波健太県警本部長に報告した前野さん=7日午後、県庁

 警察庁が主催する2023年度の「交通安全ファミリー作文コンクール」小学生の部で、栃木県那須塩原市埼玉(さきたま)小4年前野(まえの)ちえりさん(10)が11日までに、全国最優秀賞の内閣総理大臣賞を受賞した。本県児童の受賞は10年ぶり2人目。作文では、登校班の班長として安全に注意を払う兄の存在や交通事故に遭った経験、自分にできることなどをつづった。「兄のように相手を思い、注意ができる勇気ある人になりたい」。福田富一(ふくだとみかず)知事らに報告し、「受賞できてうれしい」とはにかんだ。

 同コンクールは1979年に始まり45回目。小中学生が対象で、小学生の部には本県の82作品を含む1185点の応募があった。前野さんは2022年度の佳作(警察庁交通局長賞)に続き、2年連続の受賞。

 前野さんは昨年の夏休みの宿題で、作文に取り組んだ。題名は「班長の言葉」。登校班をまとめる6年生の兄のことを書いた。

 「危ないから、一列で歩いて」。本年度から班長になった兄は、友だちと並んで歩く前野さんを注意するようになった。そんな兄を嫌だと感じてもいた。

 ある雨の日。二列で歩いていた前野さんは自転車とぶつかった。転んで傘は曲がり、ひざにけがをした。

 「助けられなくてごめんね」。兄はそう言って悲しんだ。事故について兄が母と話すのを聞いた。「僕の力不足なのかもしれない。注意する事でみんなに嫌われて悲しいし、本当は班長なんてやりたくない」

 兄が悩みながらも、自分を守ろうとしてくれていたことに気付き、涙が出た。みんなに堂々と注意できる兄を誇らしく思った。

 自分にできることを考え、事故後は一列で歩くようにした。「これからは私が、低学年の子を安全に登校させる立場になる」。作文には兄の思いを引き継ぐ決意もつづった。

 前野さんは7日、福田知事に受賞を報告した。福田知事は「自分で考え行動するのは素晴らしい。みんなのいいお姉ちゃんとして、新しく入ってくる子たちを見守ってください」と激励。前野さんは「これからは自分から注意して大切な友だちを事故から守りたい」と話した。

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