HPVワクチン周知 新年度、群馬県が強化 動画やSNS活用中学生ら接種促す

 子宮頸(けい)がん予防を推進するため、群馬県は新年度、予防に有効なヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの周知を図る新事業に取り組む。高校生からの提案を踏まえ、交流サイト(SNS)を活用した啓発を強化。ユーチューブで公開する動画の制作や、LINEでの相談対応に取り組む。中学生が中心となる対象者が接種しやすいよう、医療機関の診療時間を延長するなどして対応する。新年度一般会計当初予算案に事業費約1800万円を計上した。

 HPVワクチンは2013年度から定期接種となったが、副反応の問題などから、国が積極的な勧奨を中止した。しかし、22年4月に「接種による有効性が副反応のリスクを上回る」と判断して勧奨を再開。県内の延べ接種件数は、勧奨再開前の20年度は2182件、21年度は6136件だったが、再開を受けて22年度は2万2343件と急増している。

 ただ、県は国による勧奨の再開や、ワクチン自体を知らない人も多くいるとみており、新規事業で周知を強化し、接種者の増加を目指す。

 県を挙げて周知に取り組むため、新たにキャッチコピーやロゴを作成し、市町村が接種を勧める通知などに使用。正しい情報発信のために動画を制作し、県の公式ユーチューブチャンネル「ツルノス」で公開する。LINEの公式アカウント「県デジタル窓口」では、ワクチンに関する相談に対応。内容に応じて、医師がメールで回答する仕組みの構築も目指す。

 接種対象となるのが、小学6年~高校1年相当の女子であることから、平日の昼間以外の接種機会を拡充する。医療機関に協力を呼びかけ、診療時間を延長して夕方や土日にも接種しやすくするほか、ショッピングモールでの接種も検討している。

 県内の子宮頸がん予防を巡っては昨年12月、高校生が知事の相談役となって助言する「高校生リバースメンター」での提言を受け、知事や有識者による意見交換会を開催。HPVワクチンを知らない層への広報や、接種機会を拡充させることの必要性が指摘され、今回の新事業につながった。

 県感染症・がん疾病対策課は「県医師会や市町村と協力して、県全体でワクチン周知を盛り上げたい」としている。

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