作業員「まさにパズル」 膨大な破片から土器復元、約20点完成 田小屋野貝塚(青森・つがる市)

白い筆を使った注記で、出土場所の情報が記された土器の表面
土器片と土器片をつなぎ合わせていく接合の様子
接合を終えたサイズの異なる土器。左は小林学芸員

 つがる市教育委員会は2023年度から、世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産の一つである、同市の田小屋野貝塚で出土した遺物の整理作業を行っている。現在は、膨大な量の土器片から土器を復元する接合が終盤を迎え、これまでに約20点完成。将来、市内の施設で公開したい考え。

 市教委は22年度、同貝塚で7年ぶりの発掘調査を実施。接合や分類などの整理作業が必要な大量の土器片、石器が見つかった。これらの遺物を市文化財収蔵庫に運び、23年5月から、学芸員2人と公募で集まった作業員4人が整理作業を行っている。最初の約3カ月間は洗浄した土器片に文字、数字、アルファベットを用いて出土した場所の情報を筆で書き込む注記を行った。

 その後、接着剤で土器片と土器片をつなぎ合わせて復元する接合に入った。作業員たちが土器の開口部や底部のイメージ、土器片の表面にある縄を転がした文様などを足掛かりに、一つ一つくっつけていく。その様子は、無数のジグソーパズルのピースのようなものを立体物に組み立てる作業に似ている。

 作業員の木村千香子さん(53)=五所川原市=は「まさにパズルをしている感じで面白いし、完成させると感動する。文様を見ると(縄文人が)手間暇かけて作ったんだろうなと考えたりもする」と話す。

 復元を終えた土器約20点は縄文時代前期の円筒下層式土器。サイズは高さ約15~55センチ、開口部の直径は約10~35センチとさまざまだ。県内で発掘例が少ないという、爪で文様をつけた円筒下層式土器も見つかった。発掘の際に必要な土器片が得られなかったことなどから、表面の一部または半分近くが欠けた状態で復元終了となったものも目立った。

 つがる市教委の小林和樹学芸員は「発掘では膨大な量の土器片をはじめ想定以上に多くの遺物が出た。成果にして早く紹介できるようにしたい」と語る。

 接合は2月末ごろで終了する。24年度からは土器の文様の種類特定などを目的とした拓本と、石器の表面、裏面、側面を図面にする実測を本格的に行う。24年度末には発掘調査報告書も刊行する予定。

© 株式会社東奥日報社