社説:滋賀県予算案 「ともに」支える施策着実に

 滋賀県が2024年度の当初予算案を発表した。

 一般会計は6100億円を超えた。過去4番目の規模だが、新型コロナウイルス感染症対策費を除いた額で比較すると、当初予算額としては過去最大になる。25年に控える国民スポーツ大会など、大型イベントの開催準備経費が歳出を押し上げた。

 コロナ対応の5類移行後、初となる当初予算編成にあたり、三日月大造知事は「ともにいきる」をキーワードにしたと述べた。子どもを中心にした安心安全で持続可能な社会経済づくりなどに重点を置いたという。

 湖国でも社会活動の担い手不足や公共交通網の縮小など、人口の減少や偏在に伴う課題がコロナ禍で顕在化した。施策に込めた狙いを示し、この先に、どんな滋賀を目指すのか県民に分かりやすく説明をしてほしい。

 子ども関連施策では、多様な学びの機会や環境を整えるため、不登校状態にある子どもの支援を盛り込んだ。

 教室とは別の部屋で学習指導を行う体制を強化するほか、フリースクールを利用していない子どもも含め、現状把握に初めて取り組む。その上で、学校に行きたくても行けない子どもの居場所づくりへ、コーディネーター配置やオンライン学習などで市町を支援する。

 不登校支援を巡っては東近江市長が昨年、フリースクールについて「国家の根幹を崩しかねない」などと発言し、当事者の実態を理解していないと抗議が相次いだ。次代を担う子どもの育ちを、社会全体で支える機運を高めることも不可欠だろう。

 県内への22年の工場誘致件数は13件と、前年より14件減少した。用地不足が一因と指摘されている。そこで新たな産業用地を県内2カ所で開発し、うち1カ所は北部に設けるとした。人口の流出で高齢化が進む県北部の振興に注力する。

 また、今年3月には北陸新幹線が福井県の敦賀駅まで延伸開業し、滋賀でも北部活性化に好機との声が出ている。住環境の整備などを担う市町と緊密に連携し、北部の新たな魅力の創出に結びつけたい。

 4月から公有民営方式での上下分離に移行する近江鉄道への負担金をはじめ、地域公共交通の維持や活性化のために充てる費用は12億円に及ぶ。

 三日月氏は導入を検討する「交通税」について、24年度中に額や規模を示すという。人口減を見据え、地域のバスや鉄道網はどうあるべきか、県民挙げて議論する仕掛けが必要だ。

 歳入は、世界的な景気の減速などで県税収入の減少を見込んだ。基金の取り崩し、県債の発行はともに増えた。

 国スポに向けて整備した施設の維持管理や、今後のインフラ改修などには巨費が必要となる。財政を含めた持続可能な県政への将来展望も欠かせない。

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