「人手不足、ICT人材が足りない」ターゲットはインド!自治体がクリケット大会を開催したワケ

イギリス発祥で、野球の原型と言われ、世界の競技人口もトップクラスの競技といえば、クリケット。このクリケットの大会が静岡県富士市で2月10日に開かれたのですが、主催したのは静岡県でした。なぜ、県がクリケットの大会を開くのか、狙いはある人材の獲得にありました。

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10日、富士市の河川敷で開かれたクリケット大会。8チーム64人が参加しましたが、参加者のほとんどがインド人です。

<日本で働くインド人>
「東京のITコンサルの会社。日本企業です」
「私は、去年まで自動化やオートミッションのロボット関係の仕事をやっていたが、今年からIT関係に入る予定です」
「私は主に航空関連。もしくは半導体の分野で使われている部品の設計を主にやっています」

インド人の勤め先は、楽天やアイビーエス・ソフトウェア、ノキアなど、首都圏でITに力を入れる企業です。「クリケット」は人口世界一となったインドで国民的な人気があり、国内のインド系企業の多くがクリケットのチームを持っているそうです。

<静岡県地域外交担当 松村昭宏部長>
「静岡県では人手不足になっていて、特に高度人材という特種な技能を持っている人が足りない。海外の人材に活路を求める一環で、インドの人はITの分野で技能が高い人が多いということで、インドに着目して、その人たちを静岡に呼び込むためにクリケット大会を主催した」

静岡県内のICT人材=情報通信技術の扱いに長けた人は約1万9,800人。すべての産業に対する割合は1.1%で、全国平均の2.6%と比べると、半数以下と低い水準にあります。

<静岡県職員>
「ZOHO staff member's enjoy cricket in KAWANE-HONCHO(ゾーホーの社員は、川根本町でクリケットを楽しんでいます)」

静岡県が狙いを定めたのが、豊富な人材が存在するといわれるインドです。県がクリケット大会を主催したのには、国内に進出しているインド系企業の拠点誘致やインド人材の獲得という狙いがありました。

静岡県内では過疎化が進む川根本町に「成功事例」があります。ソフトウェアの開発会社で、世界1億以上のユーザーにクラウドサービスを提供している「ZOHO」。インド系企業の「ZOHO」は2018年、日本本社のサテライトオフィスを静岡県川根本町に設置しました。

<ZOHOジャパン 新川靖文さん>
「我々はクラウド製品を提供している。ネットワークさえあればどこでも(仕事が)できることを会社として実践するために、川根本町で働いている」

インドからも社員が派遣され、川根本町で暮らしながら仕事をしています。

<インド人社員 モハンさん(26)>
「川根本町に来て1年くらいになる。製品の技術サポートをしている。お客様が製品に問題や疑問があったときにチャットでやりとりをしている。ここで仕事はしやすいです。外の雰囲気がいい。静かな場所だから仕事も簡単にできる。(地元の人と)平日にバドミントンなどをして遊んでいる」

サテライトオフィスは企業が少ない町に新たな雇用を生み出しています。

<ZOHOジャパン社員>
「川根本町に住んで15年になるんですが、つい最近、こちらに就職しました。子どもがいても働きやすい環境になっている。(町に)サテライトオフィスがあって、本当によかった」

インド人のスタッフはすっかり町に溶け込んでいます。この日はレンタカーを借りに来ました。

<川根本町の住民>
「バーベキューを一緒にやったりとか、お祭りにも参加してくれて、近い存在になっています」

川根本町は今後も海外の企業を呼び込んで町を活性化させ、シリコンバレーならぬ「川根バレー」を目指したい考えです。

<川根本町 秋元伸哉副町長>
「地元の人と海外の人が交流する場など、外国人が住みやすい環境づくりを町としても積極的に取り組んでいきたい」

人口世界一、優秀なIT人材を今後も輩出し続けると言われるインド。インド人材との接点を増やしていくことが、静岡県内の産業にとって重要なポイントになるかもしれません。

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