東京再発見 第5章 近代遺産「灯り」で復活~荒川区荒川・三河島水再生センター~

1922年に日本初の近代的な下水処理場として開業した三河島水再生センター。象徴的な赤レンガ造りの旧喞筒(ポンプ)場施設が国の重要文化財に指定されている。この喞筒場施設は、創業当時の姿を残しており、近代下水処理の代表的な遺構として重要なもの。敷地面積197,878㎡、下水処理能力は700,000㎥。

キャンドルの灯りと三日月の競演

1999年に稼働を停止したが2007年に国の重要文化財に指定された。耐震補強などが施され、2013年から一般公開がされている。(要予約。なお都内には20か所の水再生センターが現有する)

明治維新後、国内ではコレラがまん延し、その大きな要因と言われた下水処理が急務であった。そのため、計画されたのが、この三河島の地であった。

子供の頃は、三河島下水処理場(2003年、水再生センターと改称)と呼ばれていた。地図を見ても荒川区内の大きな敷地を占有していた場所だ。一部は、地上部分に蓋をして「荒川自然公園」に生まれ変わっている。近くに住んでいながら、なかなか内部を見学する機会がない場所だった。

3,600個のキャンドルが彩る旧喞筒(ポンプ)場施設## より有効なイベント告知・・・

施設見学とは別に、2015年から年に一度だけ、3,600個の蝋燭を灯し建物を映し出すという趣向の「キャンドルナイト」が開催されている。しかし、東京都の施設であるが故、荒川区の広報誌には情報が発信されていない。そのため、訪れるお客様の数はかなり少ないようだ。

レンガ造りの旧喞筒(ポンプ)場施設

また、春には施設内の桜を愛でる企画も行なわれている。しかし、こちらも地元の方々しか来訪していないように思える。

地域の宝をより多くに知ってもらうためにも、行政間の告知・情報発信の連携が望まれる。また、隣接して走る都電荒川線も東京都交通局が運行している。都の部署連携が深まれば、多岐に渡る観光素材の開発につながるものと考える。

体験学習こそ、今求められるモノ・コト

桜花の向う側にレンガのキャンバス

下水処理という近代産業遺産、観光コンテンツとしての歴史的価値は高く、学習的な効果も豊かなものである。学生団体で言う「体験学習」は、一般団体においても「売れる」素材である。

「キャンドルナイト」「桜の開放」ともに、地域住民ボランティアを活用する方法も検討したらどうだろうか。もう少し開催日を増やすことが可能となれば、本来の施設見学も理解が深まる。イベントで集客するのではなく、本来の「遺産」をしっかりと活用すること、それは未来につなげる私たちの努力・義務だと思う。

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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長

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