紫式部が暮らした「越前国府」の発掘調査地、観光資源に 「光る君へ」合わせ立体画像で遺跡を“見える化”

本年度の越前国府発掘調査で確認された埋め戻す前の遺跡。越前市は観光客の受け入れ環境を整える=2023年10月、同市国府1丁目の本興寺

 福井県越前市は、越前国府の所在地を探る発掘調査地の観光資源化に乗り出す。国府内の施設を区画していた可能性がある溝が見つかった本興寺(同市国府1丁目)の境内で、埋め戻した遺跡の状況をスマートフォンの立体画像などで“見える化”する仕組みを検討している。解説看板も近く設置して、NHK大河ドラマ「光る君へ」に合わせて訪れる紫式部ファンらを受け入れ、千年の歴史を体感してもらいたい考えだ。

 本興寺の境内で行われた本年度の発掘調査では、平安時代前期の層から幅約250センチ、深さ約70センチの溝が見つかった。掘られた方向が東西の正方位に当たり条里制の特徴と合致していることなどから、国府の区画跡である可能性が高いとされ、長らく未解明だった越前国府の位置特定に大きく近づいた。

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 越前国府は、紫式部が生涯で唯一都を離れ、国司に任じられた父藤原為時とともに暮らした地。23日には、市武生中央公園まさかりどんの館で「光る君へ」の世界観を表現する大河ドラマ館がオープンする。3月には北陸新幹線県内開業を控える中、同市の歴史や文化を象徴する国府の発掘現場に観光客の受け入れ環境を整えることにした。

 「越前国府発掘プロジェクト」は本年度から5年計画で始まった。2024年度は同寺境内の隣接地約150平方メートルで新たな発掘調査を行う計画で、訪れた観光客には市担当者らが所在地解明の経過を説明する。本年度分も含めて調査を終えた発掘現場は遺跡保護の観点で埋め戻されることから、その後も現地で国府の歴史を感じてもらう仕掛けを用意する。

 立体画像は、発掘時に撮影した記録写真を活用。専用アプリの開発も視野に、スマートフォンをかざすとその方向で確認された遺跡の様子が映し出される仕組みを検討している。溝や柱穴など遺構や遺物の解説を表示する機能も想定している。

 発掘成果を紹介する解説看板は、大河ドラマ館オープンに合わせて境内に設置し、調査の進ちょくに合わせて随時更新していく。QRコードで詳しい内容を記したホームページに誘導する。緑釉陶器や墨書土器など国府があった可能性を示す出土品は、市武生公会堂記念館に常設展示しており、同館への案内表示を加えてまちなか回遊を促すことにしている。

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