無病息災や五穀豊穣を祈り、赤鬼や青鬼が練り歩く伝統行事「鬼こそ」が、兵庫県丹波市山南町谷川の常勝寺であった。むき出た金色の目玉や牙があり、体はひもで縛られた鬼4匹が、鳴り響く鐘や太鼓に合わせて足を踏みならし、本堂の廊下を一周した。境内は参拝客らの歓声で包まれていた。
同寺開祖の法道仙人が村人を苦しめる鬼を改心させたという伝説にちなむ。600年以上の歴史があるとされ、檀家約10人でつくる保存会が継承している。
11日午後1時ごろ、同寺の住職や僧侶らが経典を空中に広げ、一部を唱える「大般若経600巻転読法要」で始まった。
ほら貝や鐘がけたたましく鳴ると、怖い顔をしているが、改心して善良になった鬼が登場。法道仙人を先頭に、たいまつや矛を振り回したり、足を大きく振り上げたりしながら一歩一歩進んだ。最後に、御利益があるとされる燃えたたいまつを境内に投げ落とし、参拝客らが取り合った。
新型コロナウイルスの影響で2021年以来中止していた餅まきもあり、参拝客は投げられた小さな丸餅を受け取っていた。
久下小学校4年生の女児(10)はたいまつを手にし、「これで願いがかなう。健康な毎日を送りたい」と大喜び。「目が飛び出て鼻が広がった鬼はここでしか見たことない。ちょっと怖かった」と話していた。(伊藤颯真)