立場を超えて福祉を学ぶ 青森市の事業者有志、人材育成へ社団法人

成田理事長(奥右)、宮下知事(同左)に意見を伝える法人旗揚げイベントの参加者ら

 青森市内の障害福祉、介護福祉、生活自立支援などの福祉関連事業者が中心となって昨年、人材育成や交流を目的とした一般社団法人「青森ソーシャルサポート」を設立した。他領域の福祉について学びたい職員や、福祉サービスを受けている当事者、家族らなど分野や立場の枠を超え、幅広い層に向けた研修を企画している。同法人は「現場間のつながりや身に付けた技術は、サービス利用者に必ず還元できる」として、活動を通して地域福祉の充実を図りたい考え。

 同法人は昨年9月の設立後、刑務所退所者の再犯防止、精神科デイケアをテーマにした研修会・施設見学会を開いてきた。現在は、障害のある子どもの就労支援に向け、早期から関係機関が連携する場を圏域ごとにつくるなどの取り組みへ準備を進めている。

 同法人によると、福祉関係の研修は従来、専門領域ごとや資格ごとに参加できる範囲が限られていることが多いため、他領域のサービスに苦手意識を持つ福祉職員もいるという。

 こうした背景を踏まえ、同法人は受講者の専門区分を限定せず、従事者やサービス利用者まで幅広く受けられる研修を企画。職員の技術向上や利用者への情報提供を通じて、サービスの質の向上を図るとしている。

 主任相談支援専門員や、医療的ケア児の圏域アドバイザーを務める成田豊理事長は「領域の枠にとらわれず、学びたい人が意欲を持って学べる場をつくる。職員のモチベーションを高く保ち福祉職の魅力を高めることで、離職防止や人材確保にもつながれば」と意義を強調する。

 10日、青森市の男女共同参画プラザ「カダール」で開いた旗揚げイベントには、県内各地の福祉事業者、当事者や家族ら270人が参加。ゲストの宮下宗一郎知事に対し「障害者という理由で、アパートを借りることができない事例がある」「赤ちゃんが外出先でおむつ交換や着替えできる場所は増えたが、医療的ケア児や高齢者向けの場所は不足している」など、各分野の課題を次々と訴えた。

 成田理事長はイベントを振り返り「参加者の期待や熱意をひしひしと感じた。現場の意見をどうやって実現できるか、気合を入れて考えたい」と語った。

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