『デッドプール&ウルヴァリン』の敵はカサンドラ・ノヴァ? 予告に隠された驚きの小ネタ

こんにちは、杉山すぴ豊です。ここ最近のアメコミヒーロー映画まわりのニュースや気になった噂をセレクト、解説付きでお届けします! 今回は、第58回スーパーボウルをきっかけについにお披露目になった、ファン待望の“デッドプール3”の予告編解説です。そして本作のタイトルが『デッドプール&ウルヴァリン』であることも明らかになりました。

NFLの年間王者を決めるスーパーボウル。第58回となる今回は、2月11日(日本時間では2月12日)に実施されました。スーパーボウルのTV中継は全米の1億人以上が視聴すると言われています。となると、ここでCMを流すとその効果は絶大。いつしかハリウッド大作はここで特別なCM=予告編を流すようになりました。これと連動する形でネットや公式SNSで長尺版を配信したりと、とにかくこのスーパーボウルの日をきっかけに予告編などを解禁するケースが増えてきました。

というわけで、“デッドプール3”の予告もここで初お披露目となったわけです。この日も米マーベル・スタジオ公式やライアン・レイノルズ個人のX(旧Twitter)で早くから予告編がポストされ、大いに盛り上がりました。

そして興味深いのは、1作目の『デッドプール』の公開が2016年2月12日でしたから、2月というのは映画版デッドプールの誕生月でもあるのです(ちなみにコミックでも1991年2月出版の“ニュー・ミュータンツ”98号でデビューしました)。

なおスーパーボウル中のCMは、予告編のさわりを30秒にまとめてオンエアし、「この予告を全部観たい人はオンライン(WEB)で」という形になっています。

■タイトルは『デッドプール&ウルヴァリン』

さっそく予告編についてみてみましょう。まずタイトルが『デッドプール&ウルヴァリン』と明らかになりました。実はこのタイトルが解禁されるまで、ネットではタイトルは『デッドプール&フレンド』になるとの噂が流れていたのです。さすがにファンの間でそれはないだろうと物議をかもしていたのですが、結果良いタイトルになりました。しかも日本語タイトルも原題通り『デッドプール&ウルヴァリン』、7月26日に日米同時公開されます。

なお、ヒュー・ジャックマンが同じタイミングで「タイトルは『WOLVERINE&ASSHOLE(ウルヴァリン&最低野郎)』に直したぞ」というユーモアたっぷりの投稿を自身のXでしています。

■デッドプールのMCUデビューをいざなうのはTVA

では、この予告編を振り返ってみましょう。大まかな流れとしては恋人、友人たちと幸せな時間を過ごしていたデッドプールことウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)が、突然TVA(時間変異取締局)に拘束され、彼らの命令(依頼)を受け新たな戦いに巻き込まれる。そしてその戦いの最中にウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)と出会う、というものです。

実は、この予告の冒頭がすごくよく考えられていると思います。つまり「恋人、友人たちと幸せな時間」の恋人・友人とは、映画『デッドプール』『デッドプール2』 の登場人物たちです。つまり、ここで描かれている世界は、両作が作られた20世紀フォックス(現・20世紀スタジオ)版の映画世界です。さらに恋人ヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)はちゃんと生きてますね。これは『デッドプール2』でのタイムトラベルによる歴史改変の成果です。

ところが、TVAは『ロキ』でもおなじみのマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に存在しています。

この『デッドプール&ウルヴァリン』は、ビジネス的なことでいうと、20世紀スタジオがMCUを展開するディズニー傘下になったため、“MCUとして作られるデッドプール映画”となります。しかしながら、旧20世紀版『デッドプール』2作の続編でもある。つまり旧20世紀版の世界とMCUを本作で融合させる必要があります。そこで物語的には、

・旧20世紀版の世界とMCUはそもそもマルチバースの関係だった(このアイデアはすでに『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』や『マーベルズ』でも触れられています)
・したがってマルチバースを行き来できるTVAがデッドプールをMCUの世界に引き入れた

ということになります。さらに、もともとデッドプールは前作『デッドプール2』でタイムトラベルのガジェットを手にいれ、さまざまな時間軸をいじくり、マルチバース間をひっかきまわしています。なによりも彼は“第四の壁を超える”という才能を使って、こうした事情をすべて理解できるわけです。この予告の冒頭はこれらすべてをうまく説明していますね。

■デッドプールがMCUを救う?

となってくると注目したいのは、一体TVAはデッドプールに何をさせたいかです。TVAの責任者はデッドプールに「ヒーローの中のヒーローになれ」と言う。

一方、デッドプールは「シネマティック・ユニバースを完全に変えちゃうよ」「マーベルの神になる!」と。つまりTVAはデッドプールに対し、マルチバースを救うための戦いのミッションを与えていると理解できます。

ここで思い出すのが、『ロキ』におけるロキ(トム・ヒドルストン)とTVAの関係です。もともとロキもTVAにマルチバースを乱す“変異体”として捕まり、のちにマルチバースを救う戦いに巻き込まれ、最後にマルチバースを守る神となりました。さらにロキは、自身の変異体で女性のシルヴィ(ソフィア・ディ・マルティーノ)に出会いますが、この『デッドプール&ウルヴァリン』には女性版デッドプールともいうべきレディ・プールも出ると言われています。デッドプールはロキと似た運命を辿るのかもしれません。なお、予告編に登場するTVAのモニターには、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』『マイティ・ソー バトルロイヤル』、そして『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』で起きた事件の様子が流れています。

■デッドプールは誰と戦っているのか?

気になるのは、一体デッドプールは何と(誰と)戦っているかです。予告の1分17秒目ぐらいのところに、スキンヘッドの人物の後ろ姿が見えますよね? これが今回のヴィランと言われているカサンドラ・ノヴァではないかと思われます。プロフェッサーXの邪悪な双子の妹で、やはりスキンヘッドなんです。あと、1分47秒目ぐらいにちらっと映っているのが一瞬ドクター・ドゥーム(今後のMCUに登場すると言われるスーパーヴィラン、ファンタスティック・フォーの敵)に見えたんですが、これはひっかけかな。

このシーンで、ドクター・ドゥームもどきの後ろのほうにS.H.I.E.L.D.の空中母艦ヘリキャリアのプロペラの残骸らしきものがチラッと映ります。そもそもこの場所はどこか? 『ロキ』に出てきた“虚無”空間に似ていますね。

あと1分50秒目あたりに出てくる「たまんねえな」というセリフを言うキャラ、彼は『X-MEN2』『X-MEN:ファイナル ディシジョン』のパイロ(演じるのは前2作同様、アーロン・スタンフォード)ですね!

それにしても、デッドプールの一連のアクションは本当にカッコいい。宙に浮かせた弾倉を装填して構えるシーンなんて鳥肌物です。デッドプールというとコミカルなイメージが強いですが、戦闘能力をはじめ、とにかく戦うときにキマっているんですよね。

ところで、戦闘シーンでデッドプールの後ろに転がっている、崩壊したと思われる巨大なオブジェ、「……URY」と読めますよね。これ、おそらく20世紀フォックス(20th CENTURY)のロゴです(笑)。

■ウルヴァリン登場! 次のアベンジャーズ映画の伏線も!?

この予告には2回ほどウルヴァリンが出てきます。というか存在を匂わせています。まず1分20秒あたりのカジノのテーブルかなんかに座っている後ろ姿。白いスーツを着てますね。魔都マドリプールを舞台にした『ウルヴァリン:パッチ』というコミックシリーズのウルヴァリンでしょうか?

そしてこの予告の最後に登場するシルエットと後ろ姿。正面は見せてくれませんが、ウルヴァリンです! しかもコミックでおなじみの黄色ベースのコスチュームです(なおテレビCMのほうではすごくぼかしていますが、デッドプールの朦朧とした目がこちらに迫ってくるウルヴァリンの正面をとらえたシーンがあります)。

このシーン、最初は気づかなかったのですが、海外のファンの方のポストを見てビックリしました。2分3秒目のデッドプールがひっくり返っているシーンの向かって右になにやらゴミっぽいものが落ちているのですが、これがよーく見るとコミックの『SECRET WARS』。そう、アベンジャーズ映画第6弾のベースになると言われている作品です。

さらに、映画『インクレディブル・ハルク』に出てきたソーダの瓶(このソーダにブルース・バナーの血が混じって大騒ぎになる、という設定でした。この時ソーダを飲む人を演じていたのがスタン・リー氏でした)っぽいのです。いやあこの小ネタには気づきませんでしたが、これまたすごいイースターエッグです。

これらの予告編はYouTubeなどに公式であがっているので、ぜひチェックしてみてください。今年のMCUの劇場公開作品は、この『デッドプール&ウルヴァリン』だけです。過激な会話や流血シーンが多く、R指定映画確定ですね。

予告編のコピーである、「誰もが望むハッピーエンドへ」もとても気になります。この予告だけですでにハッピーなんですが(笑)、本編はさらにMCUを、いやヒーロー映画ジャンルそのものをハッピーにしてくれることを信じています!

(文=杉山すぴ豊)

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