学童野球、練習場所がない 輪島の3クラブ 学校運動場は仮設予定地

震災後、ユニホーム姿での初練習に笑顔を見せる球児=12日午後1時45分、輪島市大屋小車両動かし合同初練習

 輪島市内の小学校グラウンドが仮設住宅の建設予定地となり、地元の学童野球クラブが練習場所を追われる事態となっている。各チームは例年春に活動を本格化させるが、仮設住宅の整備が近く始まることに加え、避難所となっている学校もあり、野球に適した広いスペースは見当たらない。「どこでもいいので、みんなそろって野球がしたい」。球児の切実な訴えに保護者は心を痛め、近く市に対応を求める方針だ。

 「いったぞー」「ナイスキャッチ」。12日、輪島市大屋小の運動場に子どもたちの声が響いた。大屋、鳳至、輪島の3学童野球クラブによる合同練習。保護者や指導者が避難所利用者にお願いして駐車場の車両を移動してもらい、地震後初めて実現した。

 3クラブの約10人が参加し、ユニホーム姿で約2時間にわたってランニングやキャッチボール、ノック、バント練習などに汗を流した。鳳至クラブ主将の川口想君(11)=鳳至小5年=は「久しぶりに野球ができて楽しい。また、どこでもいいので、みんなそろって野球がしたい」と話した。

 ただ、平野部が少ない輪島市は仮設住宅の建設場所を確保するのに苦労しており、同校の運動場も予定地の一つとなった。今月下旬にも工事が始まる予定で、他の学校も避難民や復興支援部隊の駐車場となっていて練習するのは難しい。

 このほか、同市稲舟町にある市輪島野球場は地割れが起きており、三井町洲衛(すえ)の市ソフトボール場は災害ごみの仮置き場として利用されている。保護者によると、市外で練習する選択肢もあるが「時間がかかりすぎて現実的ではない」という。

 大屋クラブコーチの米谷渉さん(46)は「家にいてもゲームや動画ばかりだろうし、明るい子どもたちの姿を見られてうれしかった」と久々の練習を喜んだ。一方、今後については「何とか近場で野球をさせてあげたい。今後、市などに要望して1カ所でも練習場所を確保したい」と話した。

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