液状化しても浮かない貯水槽 災害時に「安全な水」を確保 能登半島地震でも飲料水や生活用水の確保が大きな課題に【わたしの防災】

能登半島地震では、飲料水や生活用水の確保が大きな課題となりました。こうした災害に備え、安全な水を確保できる貯水槽を静岡市の企業が開発・販売しています。地面が液状化しても地表に浮き上がらない特殊な構造をもっています。

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<清水英之記者>
「この模型のようなものが地中に埋まっていると考えれば良いですね」
<カナサシテクノサービス 武田孝之社長>
「これを大きくしたものが地中に埋まっています」

耐震性のある貯水槽。地中に埋めることで液状化への対策ができるといいます。

<清水英之記者>
「あ、浮いてきましたね。左が」

<カナサシテクノサービス 武田孝之社長>
「左側の方が何も液状化対策していない水槽のモデル。右側の方が液状化対策をしたものなので中から下の水が外に出てて水槽がそのままステイするそういう状況になっています」

巨大地震などで地面が液状化しても地中に留まり、飲料水として使用可能な耐震性貯水槽「サンドマジック」です。直径は4~6m、高さは4mで、40tと60t、そして100tの水がたくわえられる3種類があります。静岡市清水区のカナサシテクノサービスが開発し、2012年から販売しています。

この貯水槽は地中が液状化しても浮いてこないのが最大の特徴です。どうして浮いてこないのでしょうか。

<カナサシテクノサービス 武田孝之社長>
「先ほどの実験で使った実物です。こちらのグレーの水槽は従来型で何も下に液状化対策をしていないものです。すべて水圧を底面に受けてしまいそれでひっくりかえりましたね。一方でこちらの黄色い方は(底に)フィルターがついています。このフィルターで石とか砂を濾して中の水圧だけを真ん中のパイプを通じて外に逃がします。それによって水槽が浮かない仕組みになっています」

<清水英之記者>
「静岡市内にある小学校の駐車場です。私たちの生活の身近なところに埋められています」

静岡市立清水高部小学校には、貯水量100tのサンドマジックが設置されています。約1万1000人の3日間分の飲み水が貯水されています。

液状化対策がされた耐震性貯水槽は、防火水槽などを含めると静岡県内60か所に設置されています。

東日本大震災や能登半島地震では、液状化により貯水槽が地面に浮き上がり使えなくなった例が報告されています。

基本的には非常時に使う貯水槽。地中に埋めておけば、その上を駐車場などに有効活用できます。そして、最大のメリットは。

<カナサシテクノサービス 武田孝之社長>
「地上にあると太陽の光、熱などで劣化してしまいます。地下にあると水質も安定して、いざというときに安心安全な水が飲めると」

さらに、この貯水槽は地中の水道管とつながっていて常にきれいな水が循環しています。

<カナサシテクノサービス 武田孝之社長>
「本管が折れて圧力が減るとこの箱の中に緊急遮断弁というバルブが入っています。そのバルブが自動でシャットアウトして中の水は常にクリーンな状態になっています」

大地震に襲われてもクリーンな水が確保できる強い味方です。

静岡県が作成した「南海トラフ地震などで液状化が想定される場所」の地図を見ると、赤い地点で液状化の可能性が高く、県西部では、浜名湖周辺が特に赤くなっていて注意が必要です。

また、天竜川の河口から磐田市、袋井市の海岸付近では赤い色が目立っています。中部では静岡市の清水港周辺が特に赤くなっていています。

静岡県内には今回、紹介したものを含めて耐震性貯水層が60か所に設置されています。ただ、そのほとんどが静岡市内にあるため、水の確保について、それぞれの地域にあった対策が求められます。

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