ボクシング高校6冠のサウスポー、プロのリングへ 進学から転換、井上尚弥所属ジムに「より強くなれる」

昨年10月の鹿児島国体で少年男子バンタム級の頂点に立った坂井優太=鹿児島県、阿久根市総合体育館(撮影・斎藤雅志)

 日本ボクシング界のホープ、坂井優太(西宮香風高3年)がプロ転向を決意した。2022年に世界ユース選手権のバンタム級王者となったほか、1年生の夏の全国高校総体(インターハイ)以降、出場した6度の全国大会すべてで栄冠を手にした逸材。次はプロのリングで飛躍を誓う。(永見将人)

 尼崎市出身で、スピードと防御技術、カウンターに秀でたサウスポー。小学生の頃から父と二人三脚で練習に励み、高校で才能を開花させた。「人とのつながりがある部活動のおかげで人間性の面で成長でき、結果に結びついた」と坂井。22年度には日本ボクシング連盟の男子最優秀選手賞に輝いた。

 もともとは大学に進んで五輪を目指すつもりだったが、国際ボクシング協会の不明朗な組織運営などで五輪から除外の可能性が取り沙汰されるなど、すっきりしない状況の中で迷いが生じた。そんな時、世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥らが所属する大橋ジム(横浜市)から誘いを受けた。

 気持ちが傾いたが、父から覚悟を問われた。「負けたら終わりの世界。人生を懸けてやるんだな」。1週間自問し、「より強くなれるのはこっちの道」と心を決めた。

 昨秋の国体で優勝した後、プロ転向へ向けて「日本で一番練習した自信がある」と語るほど自らを追い込んできた。プロ選手とのスパーリングでは圧力やテンポの違いに戸惑って被弾が増えたが、「最近やっとつかめてきた」と手応えを示す。

 大橋ジムで間近に接した井上尚の姿からも刺激を受けた。「あれだけすごい王者なのに誰よりも早く来て練習準備をしていた」。尊敬する一方、タイプの違いは自覚している。「ディフェンス面で魅了し、カウンターで倒す」とプロでの理想像を思い描く。「世界王者になるなんてまだ言えない。一戦一戦勝って上へ」。冷静な口ぶりに自信が漂う。

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