円安だけど海外旅行 「世界一美しい散歩道」ミルフォード・トラックを歩いた

-今日はニュージーランドを聞かせてください。

代田秀雄さん 12月1~11日の日程で行ってきました。オークランド経由でクイーンズタウンに飛び、「世界一美しい散歩道」と言われるミルフォード・トラックを歩いてきました。

-ニュージーランドに行ったことがないんですが、北島と南島がありますよね。

代田さん オークランドはニュージーランド最大の都市で北島の北端にあります。国際線はほとんどがオークランドに着くので、南島の南端にあるクイーンズタウンには国内線で移動しました。

-コロナ後では初めての海外旅行ですか。

代田さん いいえ、昨年7月にカナディアン・ロッキーに行ったのがコロナ後、最初の海外旅行です。

-どちらも自然が豊かなイメージですね。

代田さん そうですね。山歩きと、おいしいワイン、おいしい食事は私と妻の共通の楽しみです。私はワイン好きで、ソムリエの資格を持っています。妻は長野県信濃町で森林セラピーのトレーナーをやっています。ですから共通の趣味に合わせて目的地を選んでいます。

-コロナ前はどのくらいのペースで海外旅行をしていましたか。

代田さん だいたい年に2回ですから、以前のペースに戻った感じですね。

4泊5日33・5マイルのガイド付きウォーキングツアー

時にフィヨルドの風景が広がる

-お待たせしました。ミルフォード・トラックについて教えてください。

代田さん フィヨルドランド国立公園にある、全長33・5マイル(50数キロ)の散策路を4泊5日で歩いてきました。環境に負荷をかけないよう入域人数が厳しく制限されていて、ガイドなしだと1日40人まで、ガイド付きで50人までしか入れません。以前から行きたかったんですが、世界中から大人気の場所ですから、その年の予約開始日に、すべてソールドアウトになってしまうんです。私たちも1年前に予約して、ようやく行くことができました。参加したのはアルティメイトハイクス社主催のガイド付きツアーです。

-宿泊はテントですか。

代田さん コース上にアルティメイトハイクス社が運営する宿泊施設があります。ロッジというより、ちゃんとしたホテルという感じです。相部屋プランもありますが、私たちは個室を予約しました。夕食はコース料理でメインは3種類から選べました。朝食はバイキングで、一角にサンドイッチを作るコーナーがあり、各自が好きな素材でサンドイッチを作ってラップで包めば、ランチのできあがりです。

-コースの難易度はどんな感じですか。

代田さん 私たちはクイーンズタウンのホテルに不要な荷物を預けて、30~40リットルのリュックサックに最低限のものを背負って歩きました。水分を含めて10キロ程度の重さです。毎日15キロから20キロ程度歩くので、その程度の距離を歩けることが参加の条件でした。一番きつい日は、標高400メートルからスタートし、標高差で600メートル登って800メートル下りましたけど、参加した50人全員歩いていました。この日、ロッジ到着後余裕のある人はニュージーランド最大瀑布のサザーランド滝を1時間半で見に行くことができるのですが、行けた人は半数くらいだったと思います。

-ガイドと一緒にみんなで歩くんですか。

代田さん 参加者は自分のペースで歩きます。ガイドは先頭に1人、最後尾に1人、中央に2人の計4人で、トランシーバーで連絡を取り合い、中央のガイド2人が前後に移動しながら参加者をケアします。ですから先ほどの滝を往復できなかった人たちは、ゆっくり歩いていた人たちで、ロッジに着いた時に、1時間半かけて往復する時間が足りなかったようです。

環境負荷には相応の負担、サステナブルは世界の潮流

-参加者は世界中から来るんですか。

代田さん 私たちのときは日本人が9人いました。ニュージーランドとオーストラリアからの参加者が多く、アメリカ、ヨーロッパ、アジアは香港、シンガポール、韓国からの人が多いそうです。普段は韓国人よりも日本人が少ないそうです。

川や滝の音を聞きながら

-日本人と違って韓国人の海外旅行意欲は盛んですからね。ところで、世界一美しい散歩道でしたか。

33.5マイルを完歩

代田さん ミルフォード・トラックは雨が多いんですが、たまたま雨に降られなくてラッキーでした。雨が降ると膝まで水に浸かるほどになります。一週間前は大雨、私たちが帰った後も雨だったと聞きました。世界一美しい散歩道の意味は、晴れた日に気持ちよく歩ける歩道がみごとに整備されているところです。雄大な山に囲まれ、鳥のさえずり、川のせせらぎなど自然の音だけを聞きながら歩きました。

日本とはスケール感が違います。民家など人の営みを感じるものがなく、わざわざ都会から来て、日常とは違う世界を五感で感じることができました。日本だと、たとえ北海道でも、トレッキングエリアの近くに暮らしがあります。ニュージーランドでは、たくさんあるトレイルのうちの10ほどがグレート・ウォークにグレード分けされていて、ミルフォード・トラックはその1つです。まさにグレート・ウォークでした。

-最終日にはフィヨルドクルーズもあるんですよね。

代田さん そうなんです。トレッキングの後、最終日はミルフォード・サウンドでのクルーズになります。トレッキング後最後に泊まるロッジで完歩を祝うパーティがありました。私たちはトレッキングの服装でしたが、なかには予め、パーティ用の服を宿泊施設に送っておいて、パーティ・ウェアに着替えて参加している人もいて、華やかで楽しかったです。海外の人たちはトレッキングだけではなく、ミルフォード・トラックで過ごす、すべてを楽しもうとしていました。

それから、海外をハイキングしていて分かるのは、環境負荷の観点から、楽しむ人は相応の負担をするべきという考えが定着していることです。ニュージーランドもカナダも国立公園を散策するには入山料が必要ですし、世界的にそうした方向にあります。散策路や登山道の保全にしても救助対応にしても、サステナブルなやり方にすることが必要だと思います。オーバーツーリズム対策にもつながりますし、日本もそちらの方向に舵を切るべきだと思います。今回のツアーは4泊5日で1人30万円ほどでしたが、価値ある体験ができたと思っています。

-ワインの話も少しだけ聞かせてください。

ワイナリーツアーで訪れたギブストンバレー・ワイナリー

代田さん ニュージーランドは2回目で、前回は南島をレンタカーで一周しながらワイナリーめぐりをしました。今回はトレッキングの後、クイーンズタウンに2泊してワイナリーツアーに参加しました。南島にはセントラル・オタゴというワインで有名な地域があります。特に、赤ワイン、ピノ・ノワールの産地として知られています。ツアーでは1日で4カ所回って、おいしいピノ・ノワールをいただきました。楽しかったです。

-コロナ後の海外旅行再開で円安は気になりませんでしたか。

代田さん 確かに前回来たときより値段が上がったのを感じました。ただ、お金は思い出づくりに使うものだと思っています。次はゴールデンウイーク頃に、フレンチ・バスクとスペイン・バスクを訪ねて、おいしいものを食べようと思っています。

「今の円安」にからめとられない、大昔、1ドルは360円と決まっていたんだ

海外旅行の回復が遅れている。コロナ前の2019年の海外旅行者が約2000万人だったのに対し、2023年は半数に及ばない962万人と1000万人を下回った。年間の訪日外国人旅行者数が2500万人を超えたのとは対照的だ。海外旅行者が伸びない最も大きな要因としては1ドル140円台程度の円安が言われ、旅行業界も円安だから仕方ないとの諦めムードも漂う。

ただ、どうなんだろう。1964年に日本で海外旅行が自由化されて以降、子供時代1ドルは360円と決まっていたし、知りませんでしたか。初めての海外旅行でグアムに行った1985年前半は1ドルが250円程度で、やはりすごい円安だった。それでもお金を貯めて海外旅行に出かけたものだ。いったい円が幾らになったら次の行き時なんだろう。待っているうちに、おじいちゃんになっちゃうぜ。「今の円安」のさなかに海外旅行に行った人に話しを聞いていく。

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