ゴディバ(2月14日)

 馬にまたがり、裸婦が長い髪をなびかせる。凜とした姿に強い信念がにじみ出る。ベルギーのチョコレート会社ゴディバのロゴマークだ。時は11世紀。イングランドの小さな町での出来事に由来するとは、あまり知られていないかもしれない▼ある伯爵が修道院を建て、成功を収めた。気をよくして、公共施設の建設を次々に計画する。費用をまかなうため、重税を課す。夫人ゴディバは、庶民の負担を軽くしてほしいと懇願した。願いを聞き入れてもらう条件は一つ。「一糸まとわず馬に乗り、町中を回れ」。高潔な女性の領民愛と勇気は時を超え、高級菓子にその名を刻む▼転じて極東の島国。為政者の国民愛と言えるかどうか。物価が上がり生活が苦しかろうと、1人当たり4万円の定額減税が決まった。景気が上向きとなり、実入りが増えた分を還元するという。泉下の夫人の目にさて、どう映る▼甘い言葉にはご用心を。国の借金は増え続けている。信号は黄色とも、赤色とも言われる中、「増税隠し」ではとの声も消えない。子や孫の世代が、ほろ苦い思いを味わう未来だけは避けたいものだ。きょう14日はバレンタインデー。口の中で溶け出す一粒の味は果たして…。<2024.2・14>

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