眠らぬ熊活発化? 冬眠期なのに…目撃異例のペース 餌求め市街地にも 福島県内

 福島県内の熊の目撃情報が、冬眠時期である年明け後も相次いでいる。1月以降、計12件に上り、数件ほどの例年に比べると過去にないペースで増えている。県や専門家は暖冬や餌不足の影響で冬眠に入れなかったり、途中で目覚めたりした個体の活動が活発化していると分析。餌を求めて人の生活範囲に近づき、空腹で凶暴化している可能性も指摘している。食べ物を外に置かない対策を続けるよう呼びかけている。

 

 県と県警本部によると、近年の1、2月の熊の目撃件数は【グラフ】の通り。例年は2カ月合わせて0~4件ほどで推移しているが、今年は1月に9件、2月は13日までで既に3件となっている。

 1月には南会津町の山林で狩猟中の男性が熊にかまれ負傷する事案が発生。その後も郡山市やいわき市、西会津町などの各地で出没情報が相次いだ。道路や小屋など住民の生活圏内での目撃も多い。昨年1年間の目撃件数は687件で過去最多となった。冬を迎えても続いていることについて、県自然保護課の担当者は「いつ、どこでも遭遇する危険性があるのではないか」と推し量る。

 12日早朝には、福島市笹木野字天竺田の市街地にある福島製鋼の工場敷地内で目撃情報があった。同日午前4時10分ごろ、フォークリフトに乗って作業中だった40代男性が、熊とみられる体長約80センチの動物を1頭見つけた。

 自動販売機の近くにいる影に気づき、フォークリフトのライトで照らしたところ、東側の住宅地に逃げたという。現場はJR笹木野駅の近くで、福島駅の北西約3キロの地点。市や福島署によると、足跡や爪痕などは見つからなかった。付近の小、中学校は集団登校や保護者による送り迎えを行うなどの対策を講じた。

 

■空腹で凶暴化も 日常的な対策を

 熊は通常、秋に食いだめし、冬に山中の樹木の空洞や岩穴などで冬眠に入る。ただ、今季は食料となるブナの実などが凶作で不足したため、冬眠せず、餌を探す熊が多数いるとみられるという。

 熊について詳しい福島大食農学類の望月翔太准教授は、「暖かく、雪が少ないので活動範囲が広がっている。手を打たなければ、今後も市街地に姿を現すだろう」と推測する。さらにこの時期の熊については、餌を探して凶暴だと強調している。ただし、本能的に人間を恐れるため、山際に住む人は日頃から熊鈴を身に着け、ラジオを流すといった対策が重要だという。

 県は、野菜やドッグフードなど熊が食べそうな物を外に置かず、朝夕に出歩かない対策などに一層気を配るよう呼びかけている。今後の状況次第で出没注意報の発令も視野に入るという。

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