脱出時、盲導犬は? 踏切の仕組みや非常時の脱出、降車を体験 東武鉄道、車両基地で視覚障害者らと研修

踏切の外に逃げるため遮断棹(かん)を押し上げる参加者

 東武鉄道は8日、埼玉県春日部市梅田本町1丁目の車両基地訓練線で、障害者団体と連携し、非常はしごの利用や踏切内の歩行などを実際に体験する研修を行った。

 研修は障害を持つ利用者の実情を理解したいと昨年から実施している。乗務員や駅員が実際の電車で視覚に障害がある利用者を誘導。利用者は踏切の仕組みや踏切内から外に脱出する仕方を体験した。

 奈良県で目の不自由な女性が踏切内で電車と接触し死亡する事故が起きた。国土交通省が踏切事故防止に向け、道路にのバリアフリー指針を改定するなど対応が強化されている。

 都内と千葉県から視覚に障害がある利用者や介助者約130人が参加。臨時列車が北春日部駅にほど近い訓練線に到着し、研修が始まった。

 非常時を想定した降車体験では参加者が非常用はしごを使い電車から降りた。参加者は「白杖(はくじょう)は使える?」、「降りる時は前向き、後ろ向き?」、「意外に段差がある」、「手すりが片側にしかない」などの声が相次いだ。盲導犬をどのように降ろすかなど、その場で乗務員と関係者が模索する場面も見られた。

 参加者は踏切の仕組みを職員から学んだ。実際に踏切内を何度も歩き、段差や溝の深さ、線路の幅などを確認した。万が一踏切内に取り残された場合に脱出する体験では、遮断棹(かん)と呼ばれる踏切の棒を斜め前に押し上げる方法を試した。参加者が実際に押すと、棒が重く角度が難しいなど実感した。

 東武鉄道お客様サービス課の阿久津芳史主任は「お客様に安全、安心してご利用いただくということが第一。今後もできる限り取り組んでいきたい」、参加した世田谷区の大竹博さんは「踏切で立ち往生した時にどちらに進めば逃げることができるのか、パニックになったときに白杖を持って逃げられるか、このような研修はとても大切」と振り返った。

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