【連載コラム】第51回:女性の活躍の場が広がるMLB アスレチックスはメインの実況アナウンサーが女性に

写真:アスレチックスのメイン実況アナウンサーを務めることになるキャブナーさん ©Getty Images

近年のMLBでは女性の活躍が目立っています。2020年11月には、MLB機構の職員として実績を積んできたキム・アングさんがマーリンズのゼネラル・マネージャー(GM)に就任。メジャー史上初の女性GMというだけでなく、北米の男子4大プロスポーツで女性がGMに就任するのは史上初めてのことでした。アングGMは最初の2シーズンこそ90敗以上を喫したものの、昨季84勝78敗でナ・リーグ東地区3位となり、ワイルドカードを獲得。就任3年目にして初のポストシーズン進出を達成しました。しかし、球団フロントとの方向性の違いから退団を決断。2024年シーズンの契約オプションを自ら破棄し、マーリンズを去りました。

2022年1月には、ヤンキースがレイチェル・バルコベックさんをマイナーA級の監督に任命したことを発表。この瞬間、MLB傘下の球団で初の女性監督が誕生しました。バルコベック監督は2019年11月にヤンキース傘下マイナーの打撃コーチに就任。女性がマイナーでフルタイムの打撃コーチを務めるのは史上初めてのことでした。2021年にはコーチング・スタッフの一員としてマイナーの有望株が集まるフューチャーズ・ゲームにも参加しています。バルコベック監督が率いたチームは、2022年に61勝67敗、昨季は61勝69敗を記録。ジェイソン・ドミンゲスなどの有望株がバルコベック監督のもとでプレーしました。なお、今年1月、バルコベックさんは選手育成ディレクターとしてマーリンズのフロントオフィスに加わることが発表されています。

女性で初めて、メジャーでフルタイムのコーチに就任したのがアリッサ・ナッケンさんです。学生時代にソフトボール選手として活躍したナッケンさんは、2014年にジャイアンツのフロントオフィスに加入。2020年1月、アシスタント・コーチとしてメジャーのコーチング・スタッフに加わることが決まり、メジャー史上初となるフルタイムの女性コーチが誕生しました。今オフには解任されたゲーブ・キャプラーの後任として内部昇格の新監督候補に浮上。メジャーの監督になるための面接を受けた女性は史上初めてだと考えられています。なお、今季もボブ・メルビン新監督のもとで引き続きアシスタント・コーチを務める予定です。

日本時間2月13日には、マイナーで8年間の審判経験を持つジェン・パウォルさんが2007年以降で初めて、女性審判員としてメジャーのスプリング・トレーニング(オープン戦)に参加することが発表されました。パウォルさんは2016年6月にマイナーの審判員としてデビュー。マイナーで史上7人目の女性審判員となりました。MLB公式サイトによると、過去にマイナー最上位のAAA級まで昇格した女性審判員はパウォルさんのほかに、1988年と1989年のスプリング・トレーニングで審判を務めたパム・ポステマさんだけ。メジャー史上初の女性審判員が誕生する日は近いかもしれません。

そして、日本時間2月14日には、アスレチックスが今季からメインの実況アナウンサーとしてジェニー・キャブナーさんを起用することを発表。アスレチックスの試合の大半を担当する予定となっています。メジャー球団のメイン実況を女性が務めるのは史上初めてのことです。キャブナーさんはロッキーズのバックアップ実況アナウンサーを務めた経験があるほか、パドレスのレポーターを務めていた時期もありました。2018年4月にはロッキーズ対パドレスの試合で実況を務めましたが、女性がメジャーの試合中継で実況を務めるのは1993年以来のことでした。

フィールドの内外で女性の活躍の場が広がっている近年のMLB。単に女性だからというわけではなく、優秀な人材であるからこそ登用されているという点も見逃せません。メジャー史上初の女性監督や女性審判員など、今後さらに女性の活躍の場は広がっていくのではないでしょうか。

文=MLB.jp 編集長 村田洋輔

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