亡き妻にささげる心象風景画30点 福島県広野町の画家鶴田松盛さん 3月9日から楢葉で作品展

自宅前の花を見詰める鶴田さん

 福島県広野町の画家鶴田松盛(まつもり)さん(88)は3月9日から11日まで、楢葉町の地域活動拠点施設「まざらっせ」で、東京電力福島第1原発事故による避難生活中に描いた心象風景画の作品展を開く。長年苦楽を共にしてきた妻の故・昌子さん(享年84)にささげる。

 原発事故により2011(平成23)3月から2012年6月まで埼玉県志木市、上尾市に避難していた間に描いた30点を展示する。地震と津波の恐怖と悲しみ、着の身着のままで逃げた思い、住む場所の確保に苦労した経験など、心のうちを表現した。何ものからも「守ってくれるもの」がないとの心情を「傘が無い」との題で描いた。このシリーズは国内や米国で大きな反響を呼んだ。広野町の自宅に戻り、湯上がりに化粧している昌子さんの絵でしめくくる。

 鶴田さんは福岡県朝倉市出身。中央大法学部卒業後、機械加工の企業に就職した。34歳の時に広野町の工場に転勤した。40歳の頃に本格的に絵を描き始め、これまでに国際美術大賞展や日選展など数々の作品展で入賞してきた。双葉郡美術協会を設立し、25年にわたり会長を務めた。

 昨年12月に昌子さんの一周忌を終え、追悼の意味を込め、作品展の開催を決めた。作品展に向け、毎日、広野町の自宅前の道路を歩き、健康維持に努めている。「避難生活中、心の中にあった思いをありのままに表現した。多くの縁のある方に見ていただき、何かを感じてもらえればうれしい」と語る。

 展示は午前9時から午後5時まで。入場無料。鶴田さんが会場で作品を解説する。

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