飛び級でFIA F2デビューのメルセデス育成アントネッリ。ハミルトン移籍で空く2025年のシートを掴めるか

 メルセデスF1のチーム代表を務めるトト・ウォルフは、ルイス・ハミルトンのフェラーリ移籍に伴って空白となる2025年のシートを与えるドライバー候補の一人として、アンドレア・キミ・アントネッリにチャンスを与えるという選択を取った。

 2025年のジョージ・ラッセルのチームメイトとして、フェルナンド・アロンソやエステバン・オコンらが有力視されるなかで、ウォルフはアントネッリに飛び級でFIA F2にデビューさせるという大胆なギャンブルに出たのだ。

 トト・ウォルフは、2014年にF1デビューを画策していたマックス・フェルスタッペンがシートを探していた際、あまり大きく力を割くことはしなかった。

 約10年前、ウォルフはフェルスタッペン家に、1年間GP2で修業を積ませ、メルセデスエンジンユーザーのチームでの2017年までのシートを確約する3年契約を提案した。いずれは当時を席巻していたメルセデスのシートを与えるつもりでもあったのだろう。

 対して、レッドブルの総帥ヘルムート・マルコは、二つのチームを所持しているという利点を生かし、フェルスタッペンにトロ・ロッソから即座にF1デビューさせるというオファーを持ちかけた。その後レッドブルに乗れるという補償こそなかったが、2016年の中盤までは契約の補償をしていた。

 当時は、メルセデスファミリーの一員となることは何よりも魅力的な提案だったはずだが、フェルスタッペン一家はレッドブル側に付くことでF1への近道を選択。その後は、今に続く歴史に名を刻む活躍を見せた。

2016年F1スペインGP F1初優勝を挙げたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)

 現在ウォルフは、アントネッリのF1昇格を急ぐと誓っているようで、自身に近い関係者には「2015年にマックス(フェルスタッペン)をメルセデスに連れてこなかったのは間違いだった。キミ(アントネッリ)に対して同じ間違いは二度と犯したくない」と語ったとも言われている。

 若いイタリア人に対する彼の熱意は非常に強いため、ハミルトンのフェラーリ移籍発表後の記者会見の開始直後に自分の計画を漏らしそうになった。

 その計画について問われたウォルフは、次のように説明した。

「ジョージ(ラッセル)は、チームのリーダーになる素質を持っている。なので、ほかにチームを率いる人間を欲しているというわけではないのだ。急いでいるわけでもなく、ルイス(ハミルトン)が去った後のセカンドドライバーとして、正しい選択をしようと集中しているだけだよ」

メルセデス育成ドライバーのアンドレア・キミ・アントネッリ

 しかしすぐに、「2025年のドライバーを選んでいくことは、とても楽しみなことでもあるのだ。なぜならば、大胆なことをしてみるチャンスでもあるわけだからね」とも続けている。

「彼は11歳からメルセデスに在籍している。彼はジュニアプログラムに参加しており、キャリアは非常に成功している」

「今の段階で最も重要なことは、彼がF2に集中していることだと思う。私たちが彼の考えを変えたりするようでは、それは彼のF2挑戦の助けにはならないんだ」

「彼は数年前にカートから降りたばかりだ。まだ18歳にもなっていないこの段階で、キミ(アントネッリ)がF1に参戦するという憶測を語るのは控えたい」

 FIA F2プレシーズンテストの初日から4番手タイムを記録したアントネッリは、2024年シーズンのチャンピオン候補のひとりになり得るのかもしれない。ハミルトンがF1に乗る前のGP2から見せていた非凡な速さを、彼は披露することができるだろうか。

フォーミュラ・リージョナル・ヨーロピアン選手権2023年チャンピオンのアンドレア・キミ・アントネッリ

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