まかど温泉スキー場 閉鎖が現実味 青森県野辺地町「再開は困難」 十鉄「運営の考えない」

町が「再開は困難」と判断した国設野辺地まかど温泉スキー場=14日

 2022年8月の大雨による大規模な土砂崩れで、2年連続営業休止中の国設野辺地まかど温泉スキー場(青森県野辺地町)について、同町は14日、「再開は困難」と判断したことを明らかにした。施設所有者でこれまで運営してきた十和田観光電鉄(十和田市)が町の財政支援の申し出に対し、改めて復旧・運営する考えがないことを示したため。町は運営に関心を持つ事業者の情報収集を続けるが、閉鎖の公算が大きくなった。

 同日の町議会議員全員協議会で町側が報告した。

 同社が昨年1月、町側に「スキー場再開は厳しい」と伝えたのに対し、再開を模索していた町は同年12月の協議会で、スキー場の復旧工事と老朽化した施設・設備の更新・修繕、再開後の5年間の運営により計約4億4千万円の町の負担が生じる試算を明示。スキー場は国有地にあるため、同社がスキー場を閉鎖する場合、原状復帰しなければならず、約1億4千万円の費用が見込まれることから、町が同社に運営費を全額補助する再開案を提案した。

 議員からは再開を望む声の一方、「一事業者に、町が運営費まで全額補助することに疑問を持っている」などの慎重意見もあった。

 これらの意見を踏まえ、町が「運営費だけでも負担できないか」など同社と再協議を行った結果、同社が1月中旬、「今後、年配の従業員などが退職を迎えていく中、運営に関わる人材を確保できるか分からない状況で、町に財政支援などで迷惑をかけるような回答はできない」との考えを示したという。

 14日の協議会で、野村秀雄町長は「再開には運営のノウハウを持つ十和田観光電鉄に主体的に関わってもらうことが不可欠だが、町の財政支援を受けて復旧・運営する考えがないことが示された今、残念だが、スキー場再開は困難と判断した」と説明した。

 町は国から土地を借りて管理しているクロスカントリーコースなどの運営を続けることで、引き続きスキー振興を図るという。

 昨年12月の協議会で、町は町民説明会を開く方針を示していたが、提示できる再開案がなくなったため、行わない。14日の協議会では、高沢陽子議員が「再開を期待していたので非常に残念」と述べた以外に、議員から再開を望む声は出なかった。説明会開催を求める声は複数出た。

 「スキー発祥の地」の碑が立ち、スキーが盛んな同町。野辺地スキークラブの江刺家忍会長は「経費や今年の少雪の状況を見れば、仕方がない」と理解を示しつつ「県南地方のスキーヤーにとっては残念。運営に意欲を見せる企業の出現に期待するしかない」と語った。町内の70代男性は「観光面などを考えると、町にとっては不幸」、40代女性は「スキー人口が減っているとはいえ、再開すると聞いていたのでショックだ」と語った。

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