レッドブルとレーシング・ブルズの“技術共有”をライバル勢が懸念。代表は「規則を検討し可能な限り共有する」と主張

 レッドブル所有でファエンツァに拠点を置く、かつてはスクーデリア・アルファタウリとして知られていたF1チームにとって新たな時代の幕が開く。ビザ・キャッシュアップRB F1チーム(レーシング・ブルズ)と名付けられたこのチームは、モータースポーツの経験が豊富なローレン・メキースとピーター・バイエルのリーダーシップの下、競争の激しいグリッドにその足跡を残すことを目指して、新たに大胆な旅へと乗り出す。

 バイエルがチームのCEOを務める一方、FIAとフェラーリF1のスポーティングディレクターとしての豊富な経験を持つメキースがチーム代表の役割を担い、豊かな遺産を継承しながら新たな地平への道を切り開く。2月8日にラスベガスで行われたレーシング・ブルズの2024年型マシン『VCARB 01』のカラーリング発表会で、メキースはリブランドされたチームを定義する方針を明らかにした。

「新しいチームを立ち上げるようなプロジェクトに、どのくらいの頻度で取り組むものだろうか? それが今ファエンツァの周りに飛び交っている精神だ」

「我々は長い間、ファエンツァとビスターという2カ所の拠点を有していた。ビスターの部門(設計と空力)はミルトンキーンズの新しい施設に移転する」

 この大胆な動きは、地理的により柔軟な環境を採用することで、従来のチーム構造に対処するものだ。

「我々はロケーションフリーの企業にしたいと考えている。明日、部門がファエンツァとミルトンキーンズに分かれたとしても、それは問題ないことだと考える。これは課題だが、多くの利点が伴うものだと思う。イギリスでもヨーロッパでも最高の人材を雇用できるだろう」

ビザ・キャッシュアップRB F1チームのピーターバイエルCEO(左)とローレン・メキース代表(右)

 F1で長くくすぶっていた論争が、この冬、ブランド名を変更したレーシング・ブルズによって再浮上することになった。グリッド上にレッドブル所有のふたつのチームが存在するということだ。このことについては、競争バランス、リソース配分、テクノロジー共有規則が悪用される可能性についての懸念が生じている。

 レギュレーションでは、ギヤボックスやサスペンションなどの“共有技術”コンポーネントが認められており、潜在的にレッドブル陣営に対する懸念がさらに高まっている。反対派は、これにより他のチームと比較して2倍のデータと開発リソースへのアクセスが許可されることになり、不当な優位性が生まれると主張している。

「レギュレーションは、自分で何をする必要があるか、何を購入できるかという点について非常に明確になっている」とメキースは主張した。

「たとえば、以前からパワーユニット(PU)をサードパーティから購入することが認められている。PUと一緒に、ギヤボックスとサスペンションも購入できる。これらのものは、そうすることにした場合に使用できる主なアイテムだ」

「レギュレーションにより、シャシー、空力、冷却システムといったクルマの残りの部分は自社で製造することになっている。こうしたものはすべてパフォーマンスに影響を与えるものであり、メーカーを定義するものだ。レギュレーションは非常に明確だ」

「我々はひとりのオーナーがふたつのチームを所有する状況にあり、当然のことながら『何を共有できるか?』と問われている。我々は共有すべきだ。レギュレーションを検討し、できる限り共有している」

「クルマの最大の部分である、我々の手にある面については、より大きな結果を目指して準備を整え、全力でプッシュしている」

「マイナス面もある。多くのチームがそうしているが、他チームのギヤボックスを使用する場合、サスペンションポイントがどこにあるのかを理解するためにチームがギヤボックスを設計するまで待たなければならず、それが空力上の決定に影響を及ぼす。それが妥協点だ」

レーシング・ブルズの2024年型F1マシン『VCARB 01』のカラーリング

 議論は依然として激しいままだ。レーシング・ブルズについては、若い才能の育成の場であり、レッドブルの戦略的後押しだという見方もあれば、力の不均衡やルール操作の可能性を懸念する向きもある。シーズンが進むにつれて、この論争は間違いなくくすぶり続け、すでに不安定なF1の世界にさらなる陰謀の層を加えるだろう。

 メキースは今シーズンにレーシング・ブルズが「よりよい場所」へ向かうと確信しているが、そこに到達するには時間がかかるだろうと予想している。

「我々は年の終わりまでマシンを開発していたので、スタート地点は昨年のアブダビで見られた状況とそれほど変わらない。我々が生み出しているすべての大きな変化と合わせて、新しい道と開発ペースを見いだすために努力し、そうすることでよりよい場所にたどりつけることを期待している」

「しかし、シーズンの序盤はおそらくかなり厳しいものになるだろうと我々は認識している。昨年末に我々は激しくプッシュしたし、この冬に大きな変化をもたらしたからだ」

「こうしたことから、シーズン後半に向けて適切な開発が促進されることは当然だろう。たとえ短期的には障害となる可能性があるとしても、これは我々が行った意識的な選択だ。我々は新しいプロジェクトを構築し、長期的に運用しようとしている」

レーシング・ブルズのファクトリー

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