裏金事件、地方の衆院選に飛び火 鹿児島1区と3区は自民、立民が直接対決 保守層つなぎとめに躍起な自民、立民は政権批判追い風に地固め

〈衆院鹿児島1区〉自民現職の宮路拓馬氏(左)と、裏金事件の余波で繰り上げ当選が見込まれる立民元職の川内博史氏

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件の波紋が鹿児島県内にじわりと広がっている。11日には野党第1党・立憲民主の岡田克也幹事長が衆院鹿児島1、3区に入り、次期総選挙の各立候補予定者とともに自民との対決色を強調。対する自民の予定者はそれぞれ、改革姿勢や政府与党での実績に理解を求め、保守層のつなぎとめに躍起だ。

 衆院議員は昨年10月に任期4年の折り返しを過ぎた。いずれの陣営も「年内総選挙は確実」。6月の通常国会終盤や、9月にある自民総裁選の前後の解散を有力視する向きは少なくない。1、3区では自民と立民の一騎打ちを見越した前哨戦ムードが高まっている。

■1区 宮路氏VS川内氏

 裏金事件の影響が最も大きい。

 自民現職の宮路拓馬氏(44)に、前回敗れた立民元職の川内博史氏(62)が挑む構図だったが、川内氏が4月に比例九州で繰り上げ当選する公算。一転して現職対決が見込まれる。裏金事件に絡み議員辞職が出た長崎3区の補欠選挙に、立民の比例現職がくら替えして出馬するためだ。

 「党全体に批判が向けられている。真摯(しんし)に反省し、総括と処分、再発防止が必要だ」。12日、宮路氏が開いた鹿児島市・鴨池小学校区の後援会役員会。若手の声を党の信頼回復に反映させる決意に力を込めた。

 後援会組織をほぼ全ての小学校区で発足。1区の公認争いを制した後の前回衆院選で当選して以降は、地元県議や市議との連携を密にしてきた。国政復帰する川内氏については「勢いが出るだろう。逆風の中でさらなる試練だ」とし、まずは4月の市議選に全力を挙げる考えを示す。

 川内氏は11日、岡田氏と並んで天文館に立ち、裏金事件や能登半島地震での初動の遅さなど政権批判を展開。「裏金まみれの人に政権は任せられない。国民生活が最も大事という原点に立ち返らないといけない」と声を張り上げた。

 浪人中もつじ立ちや集会、SNSでの情報発信で浸透を図ってきた。市議選に向けては党公認候補予定者と地域回りに力を入れている。岡田氏から「何が何でも選挙区で勝たないと」と激励を受け、繰り上げ当選は1区議席奪還への一里塚と気を引き締める。

■3区 野間氏VS小里氏

 東京・永田町でもしのぎを削る現職対決。立民の野間健氏(65)と、前回比例復活した自民の小里泰弘氏(65)は、ともに昨年夏や秋に吹いた解散風のころから足場を固めてきた。

 野間氏はこの2カ月、3区内各地で国政報告会を開き、2巡目に取りかかる。湧水町で11日開いた集会に駆け付けた岡田氏は裏金事件を「リクルート事件より深刻だ」と批判した。

 ただ野間氏は「自民への厳しい声を聞くが野党の支持率は上がっていない。追い風が吹いているとは考えていない」と受け止める。地道な活動に徹するとし、次期衆院選では全自治体での勝利を目標に据える。

 捲土(けんど)重来を期す小里氏も「選挙区で選ばれてこそ仕事に腰を入れることができる」と、国政報告会開催に余念がない。出水市では10日、党で経済対策をまとめた実績や首相補佐官としての活動を説明した。

 予算獲得ができるのは政府与党だけと訴え、裏金事件は「迷惑な話だ」(後援会幹部)。別の幹部は川内氏の国政復帰を念頭に「野党支持者が3区で勢いづくのでは」と警戒する。

〈関連〉現職対決となる衆院鹿児島3区。立民・野間健氏(右)と自民・小里泰弘氏

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