株式投資による利益をめざす上で市場動向や投資理論について理解していること大きな強みになりますが、どれだけの知識があっても、一時的な値動きや周囲の声に惑わされない強い「精神力」を兼ね備えていなければ、良い成績を残すことはできないでしょう。本稿では株式会社ソーシャルインベストメントの川合一啓氏が、株式投資で利益を得るために必要な知的能力について解説します。
直感や運に頼った投資で成功しても、長続きはしない
株式投資で利益を得るためには、さまざまなスキルが求められますが、まず必要になるのが知力です。
具体的に知力とは一体どんなものか、以下に示してみます。
・経済やビジネスの理解
・企業価値を評価する能力
・金融市場の理解
・会計の理解
・情報収集力
・分析力
・計算力
・数学の確率の理解
・株式売買の理論や方法の理解
おおまかですが、株式投資には以上のような知的能力が必要になります。
「あの会社の株を買えば儲かりそう」「最近運が良いから株でも買おう」というように、直感や運に頼った投資もできますが、それが最終的に上手くことは考えにくいでしょう。一時的に「まぐれ」で上手くいったとしても長続きしにくいことは、数学の確率を理解していればわかるはずです。
「理屈ではわかっていても実行できない」では投資で良い成績を残せない
そして知力と同時に、株式投資家に求められるのが精神力です。
これについてはピンとこない人もいると思いますが、たとえば以下のようなケースを想像してみてください。自分を律することができずに誤った行動をしていると、株式投資はなかなか上手くいきません。
・分析の結果買うべきだと判断できる株があるが、何となく不安で買えない
・分析の結果買うべきでないと判断した株だが、有名人気企業であり何となく買いたくなって、買ってしまう
・買った株が値下がりしているとき、それは事前に想定した範囲内ではあったものの不安になって売ってしまう
・買った株が値上がりしているとき、もっと上がると想定していたが早くに売ってしまう
・買った後に「この価格で買ったのは間違いだった」と気づくも、もっと上がりそうなので保持し続けてしまう
・買った株が値下がりしたが、損失を確定するのが嫌で買値に戻るまで待ってしまう
・自分なりに売買の判断をしたが、他者の声に惑わされて実行できない
以上のように、「理屈ではわかっていても実行できない」と、株式投資で良い成績を残すのは難しくなります。「精神力」と表現しましたが、言い換えれば「冷静さ」「忍耐強さ」「安定感」といった能力を伸ばすことが重要なのです。
「難解な投資理論」がいつも現実になる訳ではない
投資家に一定の知力が求められることはたしかですが、かといって「ずば抜けた」知力が必要な訳ではありません。あくまで「一定以上」あれば十分だといえます。いくら難解な投資理論を理解できる頭の良さがあったとしても、現実の投資では理論通りにいかないことが多いもの。そういった知識を投資に活かすにしても、限界があります。
そして精神力がない人は、どんな知力を備えていても上手くいきません。高学歴で仕事もできて収入も多いのに、ギャンブルにハマって身を滅ぼしてしまう人もいます。期待値が1を下回る賭け事は長く続けるほど勝てなくなってくるものですが、それがわかっていても、自分を律することができず、熱くなって賭け続けてしまうのでしょう。
株式市場は長い目でみると、平均で毎年金利+5~6%ずつ成長しているといわれます。ですから、とくに優れた知力を持つ訳でもないのに、インデックスファンドを保有し続け、着実に資産を増やしている人もいるのです。
市場平均を超えるためにはそれなりの知力も必要になるでしょうが、どれだけ知力があっても、精神力がなければ結局はインデックスファンド投資のパフォーマンスには勝てないのです。