第1原発 汚染水漏れ「人為的ミス」 東電発表 安全措置現場任せ 福島県知事、意識改革求める

 東京電力福島第1原発の高温焼却炉建屋外壁にある排気口から放射性物質を含む水が漏えいした問題を巡り、東電は15日、協力企業の作業員が建屋内にある汚染水の浄化装置と排気口をつなぐ配管の弁の状態を確認した際、開いていたことを見落とした人為的ミスが原因だったと発表した。廃炉作業では昨年、作業員が放射性物質を含む廃液を浴びるなどトラブルが相次ぐ。福島県の内堀雅雄知事は15日の定例記者会見で「東電は信頼回復に向けて、全社を挙げて意識改革に取り組むべきだ」と指摘。長期の廃炉作業に不可欠な信頼を取り戻すため、ずさんとも受け取れる安全対策の抜本的な改善を求めた。

 東電によると、水漏れは7日午前に発生した。建屋内の浄化装置を洗浄する際、閉めておくべき16カ所の弁のうち10カ所が開いていたため、汚染水を含む水が建屋の外に通じる排気口から漏れ出た。作業員2人が作業前に手順書の内容と弁の状態を現場で確かめたが、弁が開いていたことを見落とし、通常は閉じている弁が開いた状態であることを知らせる「注意札」の確認も怠っていた。

 2人は東電の聞き取りに対し、これまでの経験から弁は常に閉じていると思い込んでいたと回答。現場の空間放射線量が毎時1ミリシーベルトと比較的高いため、「早く作業を終えたいという意識があった」と述べたという。作業前の安全措置は現場任せで、複数の防止措置などはなかった。

 施設管理を担う保全部門と運転部門のコミュニケーション不足も露呈した。作業の手順書を作成した保全部門は、装置に水素がたまるのを防ぐために弁を開いた運転部門と十分に情報を共有しておらず、現場の状況と一致していなかった。

 東電から説明を受けた県原子力安全対策課の担当者は「個人的なミスを原因と決めつけることは問題の矮小(わいしょう)化につながりかねない。組織としての構造的な問題として一から対策を見直すべきだ」と指摘した。

 東電は水の漏えい量を5.5トン、含まれる放射性物質を220億ベクレルと推計していたが、水位データなどを精査し、それぞれ1.5トン、66億ベクレルと修正した。水が染み込んだ約30立方メートル分の土壌は回収した。環境や廃炉作業への影響はないとしている。

 再発防止策として、高濃度の液体放射性物質を取り扱う作業では運転部門が安全措置を一元的に担う。水処理設備に特化した新たな役職「水処理安全品質担当」を配置。社外からの登用を含め水処理作業全体の安全と品質の確保を目指す。建屋外への漏水を防ぐため、水が漏れ出た排気口を建屋内に引き込み、新たな換気口を設置する。

 昨年10月には多核種除去設備(ALPS)の配管洗浄中に放射性物質を含む廃液が飛散し、作業員4人の身体汚染が確認された。内堀知事は会見で「東電は県民から厳しい目が向けられていることを十分認識すべきだ。廃炉に向けた取り組みが県民、国民の理解の下で安全、着実に進められることが福島県復興の大前提だ」と訴えた。

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