春風に願う(2月15日)

 季節は気まぐれ。浜通りでは14日、最高気温が20度まで上がった。「喜びの春」の便りも届き始めている。難関大学の推薦合格が発表され、県内の高校生も夢をつかんだ▼福島高の女子生徒は東京大薬学部の門をたたく。研究者として創薬の道を歩む。温かな家族愛が未来を決めた。曽祖母が認知症を患い、家族が世話する姿を垣間見た。「人のために」と誓う。同じ苦しみを背負うお年寄りは絶えない。ふくしま育ちが難病を癒やす妙薬を世に送り、歴史に名を刻む―。無限の未来に期待が膨らむ▼親を慈しむ県民の気持ちは日本一。ソニー生命が昨秋実施した生活意識調査(対象4700人)で、「親の介護に積極的に携わりたい」との回答が64%に上り、沖縄県と並んで最も高かった。本県の新たな「誇り」だ。心を洗う緑の山々と青い海―。滋味あふれる風土が優しい人柄を育むのだろう▼とはいえ、目を背けられない現実も。超高齢化社会が迫っている。上の世代を支える負担が増え、職場の人手が不足する。厳しい冬の時代を楽に乗り切る特効薬など容易に見つかるまい。宿願をかなえた生徒に続こう。社会の宿題に知恵を出し合い、いつか及第点の春を。<2024.2・15>

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