山本知事「新しい世界へ」と提案説明 群馬県議会が開会 恒例の群馬交響楽団は「新世界」演奏

 群馬県議会第1回定例会が15日開会し、山本一太知事は総額7816億円の2024年度一般会計当初予算案など計108議案を提案した。開会に先立ち、群馬交響楽団が恒例の演奏を行い、ドボルザーク「新世界より」などを披露した=写真

 山本知事は提案理由の説明で、新型コロナが5類に移行して新しい世界に入ったとし「攻めの姿勢で新しい事業を進め、時代の最先端を行くような群馬県にしていきたい」と述べた。

 458億9100万円を減額する23年度補正予算案、県女性相談支援センター設置条例案、ぐんまちゃんこども支援基金条例案なども提案した。

 群響は4年ぶりにフルオーケストラで演奏した。傍聴した前橋市の男性(86)は「議場で聴く演奏も良かった。(県や県議は)緊張感を持って群馬の発展に尽くしてほしい」と期待した。

《県新年度予算案》知事説明要旨

 県議会第1回定例会が15日開会し、山本一太知事が2024年度一般会計当初予算案などの概要を説明した。発言要旨は次の通り。

当初予算編成の基本方針

 これまで新型コロナ対策のほか、さまざまな自然災害のリスクや貧困などの問題から県民の生命と健康、暮らしを守ってきました。山本県政が掲げる「県民幸福度の向上」を推進する上で最も重要なことだと考えています。同時に県のさらなる発展のためには攻めの姿勢も重要です。新群馬の創造に向けて「リトリートの聖地」「クリエーティブの発信源」「レジリエンスの拠点」の三つの近未来構想を着実に進めていく必要があります。

 24年度当初予算は攻と守のバランスを考えた予算となっています。他県ではやっていない世界最先端の地方行政モデルを数多く打ち出しました。この群馬モデルを発信していくことが、県のダイナミックな未来を創造していく上で不可欠だと考えています。こうした思いを込めて『幸福実感・新群馬実現予算~群馬モデルで未来を創る~』と命名させていただきました。

当初予算の規模

 総額は7816億円です。23年度当初予算と比較して381億円減少していますが、コロナ対策関連予算を除くと218億円の増加となります。

重点施策

 重点施策の一つ目は「県民の幸福度向上」です。未来を担う子どもたちへの教育が重要と考えており、非認知能力に着目した教育の実践に取り組みます。スコットランドとの共同研究や障害のある子もない子も同じ場所で共に学ぶ「インクルーシブ教育」について調査研究に取り組みます。

 こどもまんなか政策として養育費不払いへの対策を強化するほか、ケアリーバーへのアフターケア拠点を充実させます。女性支援では困難な問題を抱える女性を支援するため心理士を派遣するなど相談体制を強化します。多文化共生・共創としては県立夜間中学「みらい共創中学校」を4月に開校します。交通弱者に配慮した未来の交通を実現するため、グンマースを県内市町村へ拡大するための機能拡充を行います。

 次のパンデミックに備え、本格的に医療提供体制の整備や人材育成に着手します。在宅医療や災害医療などの対応拠点となる「群馬メディカルセンター」整備を支援するほか、デジタルを活用した周産期医療体制の充実や遠隔医療の整備に取り組みます。先日、小児医療センターを群馬大学医学部付属病院の隣接地に移転し、再整備することを決定しました。

 福祉施策の充実も重要です。全国で最も手厚い制度の「こども医療費無料化」を継続します。高齢者と若い世代との交流を促進し、高齢者の孤立を防ぐモデル事業にも取り組みます。県公式アプリ「ジーウォークプラス」の機能充実により県民主体の健康づくりを進めるほか、特定健診データを分析して効果的な施策を検討していきます。高齢者向けの「ぐんまちょい得シニアパスポート」をマイナンバーカードと連携させ利便性を高めます。

 重点施策の二つ目は「新群馬の創造」です。県の温泉を始めとした豊かな自然の魅力を最大限活用するため「リトリートの聖地」を目標に掲げ、長期滞在型の観光を進めていきます。農畜産物やアクティビティなど高付加価値のサービス体験を組み合わせた、県ならではの旅行スタイルを提案してまいります。

 県立赤城公園についてはキャンピングフィールドやランドステーションを整備し、25年度のオープンを目指します。温泉文化のユネスコ無形文化遺産登録については次回の国内候補選定を目指します。「クリエーティブの発信源」に向け、Gメッセ群馬にデジタル人材育成拠点「ツーモセンター」を新設します。また、「ツクルン」をサテライト展開することでデジタルクリエーティブ人材育成体制を強化します。

 「レジリエンスの拠点化」に向けては民間と連携して「命のコンテナプロジェクト」に取り組むほか、新たな減災目標を定めるための地震被害想定調査を12年ぶりに実施します。災害対応力向上のため、県庁舎内の危機管理センターの拡張整備や県内医療機関の機能強化を行います。激甚化する災害から県民の命と財産を守るため、引き続き水害対策や防災インフラの整備などにも取り組みます。

 重点施策の三つ目は「群馬モデルの発信」です。多様な人材や考えを受け入れることで群馬から新たなビジネスが次々と創出される。こうした「全県リビングラボ構想」の実現に向けて、実証フィールドの発掘や発信、共創プロジェクトの創出に取り組みます。

 農業の持続的かつ安定的な発展のため、畜産業が盛んな県の特長を活かし、有機質肥料を普及させ有機農業の拡大を目指します。ぐんまちゃんについては活動30周年を記念した事業を実施し、海外向けのプロモーションを強化します。

 次に県有施設の効果的な整備です。フラワーパークは25年4月のリニューアルオープンに向け、改修工事や開園準備を進めます。敷島公園新水泳場は民間のノウハウを活用するPFI方式で設計などに着手し、県産木材を活用した特徴ある施設をつくっていきます。

 「ぐんまDXハイスクール事業」ではICTを活用した文理横断的な学びを強化するため、公立高校に対して必要な環境整備を行います。ツクルンやツーモセンターなどとの連携を視野に教育のDXを進めます。マイナ保険証を活用した電子処方箋の活用・普及促進に取り組んだり、市町村のDX化を支援するなどDXの流れを加速化させます。グリーンイノベーションについては脱炭素に取り組もうとする市町村と企業のマッチングを支援するとともに、太陽光発電設備や蓄電池の導入を補助します。

 重点施策の最後は「財政の健全性の確保」です。攻めの予算を編成する中でも財政の健全化に留意しました。基金残高の確保、県債発行額の抑制、県債残高の縮減について前年度からさらに改善できました。

 財政調整基金の残高は前年度を上回る269億円を確保しました。これは1998年以降で最高額となっています。県債の新規発行額は臨時財政対策債の大幅減により、発行額を475億円に抑えました。これは過去30年間で最も少ない発行額となります。県債残高の減少は3年連続となり、ピークだった2021年度と比較すると984億円減少したことになります。

 山本県政では県有施設の在り方やさまざまな事業の見直し作業を積み重ねてきました。加えて、少ない投資で大きな成果を生む事業の工夫や新規事業にはできるだけ国の財源を活用するなどワイズスペンディングを実践してきました。知事によるトップセールスでも県の取り組みを政府に後押ししてもらえるよう、働きかけてまいりました。

 24年度予算編成においても①ワイズスペンディングの視点による費用対効果の高い事業への事業見直し②民間リソースなどの積極的活用③自ら「稼ぐ」施策④デジタル化による事務の効率化―により事業の見直しを進めました。県債発行を大幅に抑制し、県債残高も減少させながら前年度を上回る基金を確保することができたと考えています。

その他の議案

 特別会計について、母子父子寡婦福祉資金貸付金会計など11件を、企業会計については、流域下水道事業会計など7件を提出しております。事件議案は55件を提出しております。

終わりに

 コロナとの闘いに一区切りがつき、新しい世界に突入しました。今回の予算は群馬モデルとワイズスペンディングの二つのコンセプトにより、攻めの姿勢で新しい事業を進め、時代の最先端をいくような群馬県にしたいという思いを込めて作り上げました。山本県政の最大の目標である「県民幸福度の向上」につながるものと信じ、全力を尽くしてまいります。

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