ハミルトンと20年以上良好な関係にあるフェラーリF1代表。移籍の話は「自然と浮かんできたこと」

 フェラーリF1のチーム代表フレデリック・バスールは、彼とルイス・ハミルトンとの間には長期にわたるオープンなコミュニケーションの手段があったため、契約の話し合いは段階的に自然と持ち上がったと述べている。

 ハミルトンがメルセデスを離れてフェラーリに移籍する可能性があるといううわさは、散発的で信憑性の程度は異なるものの、メルセデスでの彼のキャリアの全期間にわたって流れていた。しかし、昨年の夏にハミルトンがメルセデスと2年間の延長とみられる契約を結んだとき、おそらく彼にとってこれがF1での最後の契約になると考えられていたため、時折飛び交っていた憶測は沈静化したかに見えた。

 その後、7度の世界チャンピオンであるハミルトンの契約には、2年目の契約を破棄するオプションと期限が含まれていたことが明らかになった。ハミルトンは事実上、2024年末にマラネロへの道を開くためにそうしたことになる。

 フェラーリ会長のジョン・エルカーンがハミルトンをメルセデスから引き離すのに尽力したと考えられているが、エルカーンの取り組みは、主にバスールの基礎固めのおかげで成功した可能性が高い。結局のところ、バスールとハミルトンは親しい仲にある。ハミルトンは2006年にバスールのARTグランプリに在籍し、彼の指導の下でGP2(現在のFIA F2)のタイトルを獲得している。

 その後、友好関係は何年にもわたって維持され、2023年初めにバスールがスクーデリアのチーム代表を引き継いだことが有益だったことが証明された。その年の後半には両者の間で“自然に”話し合いが進展した。

「我々が20年以上にわたって良好な関係を築いてきたことはご存じだろう」とバスールはフェラーリの2024年型マシン『SF-24』の発表会でメディアに語った。

「我々はいつも連絡を取り合っていろいろなことを話していたので、自然と浮かんできたことだと思う。何が簡単だったか、何がそうではなかったのかは分からないが、このように段階的に進んでいった」

GP2時代のフレデリック・バスール(ARTグランプリ/左)とルイス・ハミルトン(同/右) 2006年GP2第5戦モナコ

 話し合いが加速すると、バスールはハミルトンと契約するチャンスは逃すには大きすぎると感じた。その一方で、バスールはカルロス・サインツに対して不満は一切ないと明言した。

「ルイスのチャンスは、どんな場合でも考慮しなければならないことだ。彼は最も貴重な経験を持つ人物であり、我々にとっては大きなチャンスだ。これにカルロスのことは関係していない」

「カルロスは昨年素晴らしい仕事をしてくれた。今年も素晴らしい仕事をしてくれると確信している。彼はとてもプロフェッショナルで、我々は個人的に非常に良好な関係を築いているが、現状はこのようになっており、我々は将来に集中しなければならない」

 しかしバスールは、サインツにフェラーリの決定を伝えるのは難しい時間だったことを認めた。

「ご想像のとおり、これは私の人生で最も簡単な電話というわけではなかった。最も難しいもののひとつは、トト(・ウォルフ/メルセデスF1のチーム代表)との電話だ! 私は彼が非常にプロフェッショナルなドライバーであると完全に確信している。彼は我々の前に長いシーズンがあることを理解しているし、それは大きなチャンスだ。チームに彼がいるという状況は夢でもあると思う」

「ご想像のとおり、我々は長い話し合いをしたと思う。なお、私はカルロスを全面的にサポートしていく。彼は全力で取り組んでいるし、我々はともに仕事をしなければならないことをわかっている。我々は一緒だし、プロフェッショナルだ」

2023年F1第16戦シンガポールGP フレデリック・バスール代表&カルロス・サインツ(フェラーリ)

 2025年について、バスールはマラネロにおけるハミルトンの将来の存在が、フェラーリにとって“素晴らしい挑戦”になると考えている。しかしそれまでの間、すべての目標はチームの2024年シーズンに向けられている。

「彼が将来に向けて大きな一歩をもたらしてくれると確信しているし、誰にとっても素晴らしい挑戦になるだろうが、我々は2024年に集中したいし、気をそらすようなことはいかなることもしたくない。シーズン全体を通して2024年に集中することが重要だ。これほど早く発表したのはそれも理由だ」

「私はカルロスがシーズンの最終ラップと最終コーナーまで完全にコミットして全力を尽くすだろうと、十分に確信している。そして同様に、チーム全員が十分なモチベーションを持って、これまで我々のために素晴らしい仕事をしてくれたカルロスを全力でサポートすると確信している」

「今、我々にとって2024年に焦点を当てることが重要だ。我々には素晴らしいチャンスがあり、プロジェクトに懸命に取り組んできたので、気を散らすことはしたくない」

フェラーリが2024年型F1マシン『SF-24』をシェイクダウン(カルロス・サインツ)

投稿 ハミルトンと20年以上良好な関係にあるフェラーリF1代表。移籍の話は「自然と浮かんできたこと」autosport web に最初に表示されました。

© 株式会社三栄