社説:免税品の転売 見過ごせぬ不正の横行

 一部の外国人が消費税の免税制度を悪用し、法外にもうけていることが問題化している。政府は抜本的な対策を急ぐべきだ。

 2022年度に日本を訪れて免税制度を利用し、1億円以上購入した外国人のうち、57人に対して税関が空港で抜き打ち検査をしたところ、実際に品物を持っていたのは1人だけだった。

 残りは出国前に国内で転売したとみられるという。税関は消費税を支払うよう決定を出したが、納付者は1人。55人は所持金がないなどとして、未納のまま出国した。滞納額は18.5億円に上る。

 政府は「訪日客の消費増」を掲げ、免税品の対象拡大や手続きの簡素化を進めてきた。大半の訪日客がルールを守る中、公正さを損なう許しがたい不正である。

 政府の分析によると、22年度の免税購入総額は6千億円余りで、372万人に適用された。

 うち1億円以上の購入が374人。総額の約3割(1704億円)に及ぶ。高級時計のほか、ブランド品のかばん100点以上の例もあった。政府関係者は「高額購入者の半数以上は中国籍。多くは転売されているようだ」とみる。

 日本国内で転売すれば、消費税分が「利ざや」になる。転売業者らが訪日客を「買い子」としてバイト代を払うなど、組織的な構図も指摘されている。

 一方、税関で免税品を全量検査するのは人員的にハードルが高い。不正を見つけても、現行規定では出国を止められないという。

 国税局は最近、免税店側への調査を強化。昨年も大手の百貨店や家電量販店などに対し、パスポートや大量購入目的の確認が不十分として、免税売り上げに追徴税を課した。免税店の業界団体も各店に、同一人物による連続購入などに注意を呼びかけている。

 だが、こうした取り組みだけでは限界があろう。

 政府は昨年末に閣議決定した2024年度税制改正大綱で、「免税制度が不正に利用されている」との認識を明記。いったん消費税を課して販売し、出国時に免税品を確認できれば還付する「免税分後払い式」を導入する方向で検討すると盛り込んだ。今年末の25年度税制改正で結論を出すという。

 後払い式は欧州など多くの国が採用している。訪日客の利便性や免税店の事務負担、税関人員などには配慮しつつ、議論を深めたい。確認不足の免税店や不正者への対応など、規制強化も並行して検討する必要があろう。

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