藤井聡太八冠 棋王戦“金沢対局”に倒壊家屋から見つかった駒 亡くなった妻への思いに背中を押されて 能登半島地震

藤井聡太八冠と伊藤匠七段が石川県金沢市で対局する、将棋の棋王戦5番勝負第2局。実は、この対局で使われる駒と将棋盤は、元日の能登半島地震で倒壊した珠洲市の家屋から見つかったものでした。持ち主の思いとは。

石川県珠洲市。自宅が倒壊した塩井一仁さん(63)。そのがれきから見つかったのが…

(塩井一仁さん)
「袋状の梱包材で覆って箱に入れて保管していたので、完璧に見つけることができた」

もともと棋王戦第2局で使われることになっていた将棋の駒。全くの無傷で見つかりました。

将棋愛好家で、プロの対局でも使われる「盛り上げ駒」という最高級の駒を複数所有していた塩井さん。地震で大切な家族を亡くしました。

(塩井一仁さん)
「(がれきの中に)格子状の布切れが見えると思いますが、あれがコタツの上にかかっていた物で、その辺りが妻が亡くなった場所になります」

珠洲市にある塩井さんの家は、1階部分が完全に倒壊。妻の紀美子さんが下敷きとなり亡くなりました。

(塩井一仁さん)
「大きな声で妻を呼びますが返事はなく、近寄って声をかけますが返事はない」

妻を亡くし、駒と将棋盤の提供に迷いも 提供を決めた理由は…

2009年から地元での対局に将棋盤と駒を提供してきた塩井さんでしたが、妻の死に直面し、いつも通り提供することに迷いがあったと言います。

(塩井一仁さん)
「悲しいことがあったので、今年は提供するのはやめておこうと思っていました」「(妻は私が将棋に熱中することを)好意的に思っていたのかなと思い直して、棋王戦への盤駒提供を今年もやらせていただこうかなと」

亡き妻への思いに背中を押された塩井さん。

あの地震を乗り越えた「駒」と「将棋盤」を棋王戦の大勝負に提供することを決めたのです。

(塩井一仁さん)
「この盤と駒で(棋王戦を)彩ってほしい。皆さんが元気になる復興の契機になればと思っています」

将棋盤と駒は、対局前日の2月23日に検分が行われた後、24日に金沢市で行われる対局に使われる予定です。

© CBCテレビ