俯瞰するニッポン(その2)~巨大カルデラは天下の険・箱根上空~

今回のフライトも富士山の真上!

がっかりしたのも束の間、山口宇部空港へ日本航空291便は、箱根の巨大なカルデラの姿を見せてくれました。箱根の山々は二重の外輪山を持ち、そのカルデラの大きさは、東西8キロ、南北12キロです。芦ノ湖や大涌谷など、箱根有数の観光地を確認することができます。また、太平洋側に目を移すと真鶴半島や初島まで見渡すことができました。

関東・徳川幕府を守る自然の要衝

古来東海道の要衝であり、「天下の険」と謳われた難所箱根峠のふもと。江戸時代には宿場や関所が置かれ、近代以降は保養地・観光地として発展しました。各所に湧く温泉や、芦ノ湖、大涌谷、仙石原などがとりわけ有名となりました。1936年に「富士箱根国立公園」(現・富士箱根伊豆国立公園)に指定されています。

古くは「函根」と記され、「函嶺(かんれい)」とも言われました。その名残は、正月の風物詩である箱根駅伝でもコース上に函嶺洞門というトンネルがありました。

利権争奪戦の長い歴史

首都圏の奥座敷と言われ、観光地開発が進められた箱根。しかし、「箱根山戦争」と揶揄される歴史を刻んでいます。それは、小田急と西武、二つの鉄道会社による独自開発が弊害となったものです。双方が路線バスや芦ノ湖観光船を運行し、別会社の切符を持っていると乗車・乗船できない。まさしく、この戦争は、お客様不在の利権争奪戦でした。

しかし、箱根全山の観光客の減少に拍車がかかり、21世紀になってからやっと和解が成立するという長い戦争に終わりを告げました。

「温泉」「富士山」「新幹線」・・・訪日外国人が好むもの

時代は進み、温泉と富士山、新幹線を目的に訪日外国人が毎日のようにやって来るようになった箱根。

彼らは、小田急ロマンスカーを利用せず、東京駅から新幹線を利用します。西を目指す新幹線、箱根の出入り口である小田原駅に停車する「ひかり号」は訪日外国人だらけです。東京駅から乗車した外国人は小田原駅で、ほとんどが下車。そして、またここから外国人が乗ってくるのです。彼らは、そのまま京都まで乗車していきます。

JRパスは、訪日外国人専用の日本全国JR線に乗車できる切符です。しかし、「のぞみ号」には乗車できません。そのため、京都へ直接移動する外国人も「ひかり号」に乗車します。そして、日本人は購入できない切符です。その結果、指定券を購入するのが難しいと言われています。

大きなスーツケース・・・ここにもオーバーツーリズム

ゴルフ場が多い外輪山の中の姿

また、箱根を訪れる外国人は、大きなスーツケースを持ち、路線バスに乗車します。小田原駅や箱根湯本駅からは乗車できるものの、途中のバス停からは、ほぼ乗ることができません。大きなスーツケースが場所を占領し、本来の定員数に達せずともバス停を通過せざるを得ないという事象も発生しています。京都などにおいても同様な事象が起きています。オーバーツーリズム(特に時期と場所)の解消は喫緊の課題と言えます。

それにしても、カルデラの内も外もゴルフ場が多いことに驚かされます。環境破壊という点からも、その将来を見据えた開発が必要だと考えていたところ、飛行機は既に南アルプスを越えていました。

寄稿者 観光情報総合研究所 夢雨/代表

(これまでの寄稿は、こちらから)

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