「落水から15分で致命的」後を絶たない“流氷”のぼる観光客 ―危険行為で地元困惑 ヘリ救助所要1時間『自殺行為』との声も…冬の風物詩でにぎわう網走市

流氷の上を歩く観光客(提供:[北海道]乗り物大好きチャンネル)

流氷観光でにぎわう北海道網走市。その美しさを求め国内外から多くの観光客が訪れます。そのにぎわいの一方で地元を悩ます危険な行為。いま、流氷の上に乗る観光客が後を絶ちません。「死亡事故とかにつながってしまうと思いますので、危ないからぜひ止めてもらいたいと思います」(網走市民)こちらは2月11日に撮影され動画投稿サイトにアップされた映像。

流氷の上を歩く観光客(提供:[北海道]乗り物大好きチャンネル)

チャンネルの管理人によりますと約10人の観光客が写真や動画を撮るなど、流氷の上ではしゃいでいて、日本人だけではなく中華圏からの観光客もいたといいます。現場を取材すると、日本語、英語、中国語での注意書きがあるにもかかわらず、次々と流氷に足を踏み入れていく観光客の姿がありました。「陸地だったので。下が海じゃないので。その辺、確認したんですけど。割れ目から海かどうかって見えるじゃないですか」(観光客)彼らは流氷の下が陸地だったため、安全と判断し乗ったと説明。

流氷の上で足元の海を撮影する人も

網走市の担当者は…「正面に見えます大きな固まりの流氷がある、あの辺りは砂浜に打ちあがった流氷ですので、下は砂浜になっています。そこから先の海側の場所になると、どこまでが砂浜なのか、海なのかということはなかなか判断するのは難しいと思います」(網走市観光商工部 田端光雄さん)さらに流氷の上に乗り、海の間際で写真撮影をしているこちらの人は。「普通に写真撮影とちょっと興味本位ですね。確かに落ちたらすごい寒い海ですし、危ないとは思っていました」(観光客)

落ちたら15分で死亡…

安全な場所で海の水温を測ってみると氷点下0.1度。もし流氷から海に落ちたらどうなるのでしょうか。「今の海水温だと落水してから15分もあれば致命的。ヘリコプターによる釣り上げというのが救助では基本になるのですが、1時間くらいはかかるのでそうするとかなり厳しいと思います」(網走海上保安署 行地明男署長)

温暖化の影響か…氷が薄くなっていた

さらにいま、昔に比べ落下の危険性が高まっています。流氷の厚さは50年前には50センチから1メートルほどあったといいますが、温暖化の影響により現在は20センチまで薄くなっているところも。流氷が崩れ落下する危険性が高まっているのです。「ここ2~3日気温が上がってきているので、そうしたらやわらかい。いまは自殺行為だと思います」(網走市民)網走海上保安署によりますと、流氷に乗っている人がいるという市民からの通報は例年1、2件でしたが、今年はすでに7件を超えています。コロナ禍が明け、観光客が増加したことで通報が増えたとみられています。

SNSで流氷に乗る危険性を発信

これは網走市のとなり、斜里町のホテルのSNSです。民間も協力して流氷に乗ることの危険を発信しています。「知床では以前、観光船の事故もあった経緯がありますので、そういったことを起こしたくないという思いから声をかけさせていただいた」(知床第一ホテル 高田翔平支配人)

ドライスーツ着用の流氷ウォーク

このように地元が一丸となり流氷による事故防止に取り組んでいます。「専用のドライスーツを着用してガイド会社が流氷ウォークというのを開催していますので、ちゃんと安心安全を確保した上で体験できる」(高田さん)ルールを守って楽しい観光を。流氷のシーズンは3月中旬まで続きます。

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