「。」(2月17日)

 「結婚式を挙げることになりました つきましては 皆様により一層のご指導を賜りたく」。案内状の見本だが、どこか違和感がある。「。」「、」がない。晴れの場だけに「切る」「区切る」を避ける縁起担ぎだ▼そもそも、日本語の句読点は歴史が浅いという。和歌には必要なかった。「五七五・七七」のリズムがあるためだ。NHK大河ドラマで話題の源氏物語にも存在しない。この記号は、明治時代の教育制度開始で生まれた。意味を正確に伝える狙いだったらしい(山口謠司著「てんまる」)▼マルハラスメントを知らねば、今や周回遅れか。LINE(ライン)で、若者は句点に恐怖を覚えるそうだ。「体調が優れずバイトを休む」と伝えた際、返信は「了解です。」。最後の「。」が威圧感を生み、距離を置くとの意味に受け止められる。短文投稿に文末を示す目印が付くため、拒絶感が際立つとの指摘がある。若い世代の国語は、一周回って紫式部の時代に先祖返りしているよう▼親近感を伝える絵文字を置けば、「年配者の象徴」と一歩引かれる。さて、小欄をどう終えようか。筆者はおじさん世代。原則通りに。決して、冷たいと受け止めないでね「。」<2024.2・17>

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