「優秀な経営者」「厳しさ関東一」それでも防げなかった豚熱 栃木市で発生、同業者も「まさか」

殺処分の本格化に向け準備を進める関係者=16日午後8時20分、栃木市内

 栃木県内5例目の豚熱(CSF)発生が16日、栃木市の養豚場で確認された。2022年7月に那須烏山市の大規模養豚場で国内最大の殺処分数に達した豚熱が発生して以降、県や関係団体は対策をさらに強化。今回の農場は対策に不備が確認されておらず、豚の管理にも細心の注意を払う「優秀な経営者」とされていた。それでも防ぐことができなかった豚熱発生。県内農家は日々の対策の徹底に向け、改めて気を引き締めた。

 「感染防止対策を取っていたにもかかわらず発生し、落胆があると思う」。福田富一(ふくだとみかず)知事は16日の記者会見で、農場経営者の胸中をおもんぱかった。

 発生農場は、昨年12月下旬の県の立ち入り検査で、防疫対策に不備がないことが確認されていた。農場経営者も、子豚の食欲のわずかな低下や衰弱に気付き、15日に県へ通報。県畜産振興課によると、同日、県が農場の確認に入った際、死んだ豚は特に確認されなかった。同課の担当者は「豚のことをよく見ているからこそ、早期発見できた」と指摘する。

 22年の発生以降、県は各農場に対策の徹底を強く促してきた。全農場に立ち入り検査し、防鳥ネットなどハード面の整備だけでなく、野生動物の侵入を阻止できているかなど運用面も確認、指導した。

 「点検の厳しさは関東で一番だと思う」。県内で養豚場を営む40代男性は説明する。その中で5例目が発生し、「まさか」と驚いた。県北の養豚業男性は「気を緩めずに消毒を重点的に行ってきたが、今まで以上に気を引き締めないといけない」と語気を強めた。

 発生農場のある栃木市内では16日、殺処分に向けた作業が始まった。市は同日午後、大川秀子(おおかわひでこ)市長を本部長とする対策本部を設置。情報収集や近隣自治会への説明などを行った。

 大川市長は「畜産業はもちろん、市民生活への影響が最小限に食い止められるよう一丸となって努めていく」とコメントした。

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