穴水高「のとてまり」11万円 金沢、初競りで拍手喝采 一時全滅「諦めずよかった」

高値を喜ぶ穴水高の古道さん(左)、下出さん(右)と、競り落とした堀他の須田専務=17日午前6時40分、金沢市中央卸売市場

 正月の地震で一時全滅の被害にあった穴水高産の原木シイタケ「のとてまり」1箱(8個入り)が17日、金沢市中央卸売市場で競りにかけられた。「頑張ろう、能登やぞ」と威勢のいい声が飛び交い、11万円の値でつくと場内は拍手喝采。復興の願いがこもった競りを見届けた生徒は「今年はもうダメかと思ったけど、諦めなくてよかった」と笑顔を見せた。

 例年より半月遅れながら、生徒たちの懸命な手入れで初出荷を迎えた。午前6時20分スタートの競りを前に場内は温かい空気に包まれていた。「いい値段付けんなんぞ」。一人が声を上げると、競り人や市場関係者が続いた。

 穴水高産としては2021年の11万9200円に次ぐ高値。生産者の生徒に拍手が送られ、感極まった競り人は「おじさんらも励みになった。ありがとう」と涙ぐんだ。

 地震により、2年生35人が昨年12月から育ててきたシイタケの原木約200本が倒れた。1月6日に再開したが、断水で生育は思うように進まず。プールの水を利用するなど世話を続け、2月16日に収穫した。

 自宅が全壊した生徒、避難所暮らしで登校できない生徒もいる。古道慶太さん(17)は「こんなときにシイタケを栽培していいのか悩んだけど、能登の農業はまだまだ元気だと伝わってほしい」と前を向いた。下出悠太さん(17)は「予想以上の高値が付いてびっくり。同級生に伝えたい」と喜んだ。

 競り落とした青果卸・小売業「堀他」(金沢市駅西本町2丁目)の須田隆嗣専務(30)は「能登に少しでも明るいニュースを届けたい、と上限を決めずに臨んだ。まん丸の素晴らしい出来」と話した。のとてまりは17日、経営する金沢市野田2丁目のカフェの店頭で展示し、18日のランチで提供する。

 穴水高はこの日、最高級の「のとてまり」を1箱のみ出荷。「のと115」は3箱出荷し、3万1500~4万2千円で競り落とされた。

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