社説:災害と女性 非常時の配慮、普段の備えを

 非常時だからこそ、性差や弱者に対する配慮の視点を欠いてはなるまい。

 大規模な災害時、避難生活を送る女性や妊産婦、乳幼児向け用品の備蓄が全国の自治体で進んでいないことが、内閣府の調査で明らかになった。現実的なニーズや困り事に目を配り、安心して過ごせるような環境づくりが必要だ。

 内閣府が全市区町村に行った調査によると、対象20品目のうち16品目で備蓄していた自治体が30%を下回った。

 女性用品では、生理用ナプキンが83%の一方、女性用下着は11.9%で、妊産婦用の衣類や下着は1%に満たなかった。乳幼児向けも、離乳食やおしりふきなどは1~2割台だった。着の身着のまま避難した人らにとっては必需品であろう。

 「生理用品が人目につく場所に置いてあり、もらいにくい」「女性専用の更衣室を設けてほしいと訴えても、段ボールの仕切りがあると言われた」など、配慮に欠ける避難所の光景は十年一日のごとく変わっていない。プライバシーが守られず、過度な不安とストレスを抱えながら生活する女性は多い。

 避難所などでの暴力や性被害の防止策も急務である。

 被災地のジェンダー格差は2011年の東日本大震災で問題になったが、16年の熊本地震、今回の能登半島地震でも同様の課題が浮き彫りになっている。

 国は自治体の参考となるよう、避難所で配慮すべき項目のガイドラインを作り、対応を促すなどしてきた。

 遅々として進まない背景には、災害対応の部署に女性が少ないことが指摘されている。

 1人もいない自治体が、全市区町村の6割あり、都道府県別で最も高い長野県で8割、京都府、滋賀県は約6割を占める。

 これでは女性の声が反映されにくく、必要な備えや環境の整備がおぼつかない。

 従来、防災部局は緊急対応が多く長時間労働になるため、男性が適任と考えられてきたことが影響しているという。

 避難所でも運営責任を担う役職は男性が占める一方、炊き出しなどは女性が多い。こうした古い無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)を変えねばならない。

 今回、滋賀県から石川県能登町に応援派遣された女性職員の報告では、女性が手前で、男性が奥になっていた更衣室の位置を変えるなど、女性の視点を数々の改善に生かせたという。

 防災対策や避難所運営に関わる女性の数を増やすべく、自治体が目標を設けてはどうか。

 職員の少ない小規模自治体では、福祉や子育ての部局との連携や近隣自治体との協力なども考えたい。地域の自治会や自主防災会でも、女性や弱者の声を反映させる取り組みを工夫してほしい。

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