H3打ち上げ成功 背水の陣で臨んだ総力戦は「100点満点」 JAXA職員ら抱擁、喜び爆発 競争力向上へ決意新た

一つ目の衛星投入が確認されて喜ぶJAXAや三菱重工業の関係者=17日午前9時40分、南種子町の種子島宇宙センター

 開発から10年、1号機の失敗から1年-。今後の宇宙輸送の切り札と期待される基幹ロケットが産声を上げた。17日、南種子町の種子島宇宙センターから打ち上げられた「H3」2号機。力強いごう音を響かせ空を昇り、ミッションを次々と遂行した。背水の陣で臨んだ総力戦。「100点満点だ」。苦難を乗り越えた関係者は喜びと安堵(あんど)が交錯した。

 「(超小型衛星の)CE-SAT-ⅠE分離」。アナウンスと同時に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)職員の涙があふれた。「H3」2号機の成功を受け、開発陣らが見据えるのは日本が劣勢に立たされる世界の衛星市場。「競争力を高める一歩に」と決意を新たにした。

 プレスセンターではJAXAや三菱重工業の関係者約10人が見守った。工程が進むたび、男性職員は拳を握りしめた。「良かったね」-。1号機の失敗要因となった2段目エンジンが正常に動き、1機目の衛星分離が伝えられると職員らは抱擁を交わし喜びを爆発させた。

 JAXAの岡田匡史プロジェクトマネジャーは会見場に笑顔で現れ、「ものすごく重い肩の荷が下りた」。三菱重工業の新津真行プロジェクトマネジャーは「やれるだけのことはやったが、万一の思いが消えなかった」と明かした。

 1号機は当初2020年度の打ち上げを予定。主エンジンの不具合が次々に見つかり、2度延期した末、昨年3月に失敗した。今回の結果を「満点」と評価した2人。直後表情を引き締め、「ここからが勝負。しっかりと育てていく」「成功が当たり前となるよう仕上げたい」と力を込めた。

 質問は、国が目指す国際競争力向上の課題にも及んだ。米国などと開きがある打ち上げ数の増加に向け、JAXAの山川宏理事長は「衛星運用者にとって、種子島と内之浦宇宙空間観測所を使い勝手のいい施設にすることが重要」と説明。三菱重工業の江口雅之執行役員は「H3の打ち上げ能力は年5、6機だが、インフラを整備し、10機程度まで増やしたい」と述べた。

〈別カット〉一つ目の衛星投入が確認されて喜ぶJAXAや三菱重工業の関係者=17日午前9時40分、南種子町の種子島宇宙センター

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