震災めげず金花糖鮮やか 氷見市栄町の井上菓子舗 甚大な被害乗り越え

地震被害にめげず、金花糖づくりに励む職人=氷見市栄町の井上菓子舗

  ●桃の節句へ最盛期「季節感届けたい」

 能登半島地震で大きな被害に見舞われた氷見市栄町の和菓子店「井上菓子舗」で、縁起物の砂糖菓子「金花糖」づくりが最盛期を迎えている。店舗兼住宅は液状化や地割れで損壊。同じ通り沿いでは、廃業を決める店も出るなど、まちの復興は遠いが、職人の林真由美さん(49)は「色鮮やかな金花糖を見て、ほっとする時間を過ごしてほしい」と気持ちを込めて製造に励んでいる。

  ●店傾き、地面は凸凹、断水続き

 井上菓子舗では、地震で店舗兼住宅が傾き、地面も隆起や沈下で凸凹になった。工場は幸い無事だったが、断水が長引き、菓子づくりの完全再開まで約3週間かかった。

 ひな祭りの縁起菓子である金花糖づくりも例年より2週間ほど遅れ、今月上旬からようやく製造を開始。林さんら職人が、木製の型に高温の砂糖を流し込んで、タイや桃、ナス、イセエビなど山海の幸を模した金花糖を作り、ピンクや緑、黄などに彩色する作業に追われている。

  ●廃業決める店も

 店を構える栄町の通りでは、地震後に廃業を決める店が出ており、林さんは「昔なじみの店がなくなって行くのはさみしい」と声を落とす。井上菓子舗も1月の売り上げが例年の6割減と厳しい状況だが、常連客からの「またお菓子買いに行くね」との温かい声に励まされ、4月には念願の菓子の米国輸出も決まっているとし、気持ちを奮い立たせた。

 金花糖は今月下旬まで例年の8割となる200~300個を製造する予定だ。林さんは「復興まで長い道のりになると思うけど、金花糖や桜餅で季節感を届けたい」と意気込んだ。

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