●ナマコ不漁のまま、トリガイ解禁未定
「漁をやめる人が出てくるかもしれん。でも下を向いてても始まらん」。津波で打ち上げられた船が残る七尾市石崎漁港で、石川県漁協七尾支所の竹内大生運営委員長(38)がつぶやいた。大きな揺れは海底の形も変えてしまった。網が傷む恐れがあり、七尾支所は今月、底引き網を休漁にした。最盛期を迎えているナマコ漁はできず、高級食材トリガイ漁の解禁日も決まっていない中、漁師たちは今できることを続けている。(七尾支社・齋藤圭祐)
●今も道路に海水
七尾支社に赴任して1年半、取材で何度も訪れた港は一変していた。海側に地盤が沈み、岸壁が崩壊しており、現在も海水が道路にまであふれている。周辺の道路が割れて重機が入れず、津波で打ち上げられた船は元日からそのままだ。
地震の後、海の状況を確認しようと漁師が船を出すと、魚群探知のレーダーには海底にできた凹凸が映っていたそうだ。津波で流された土砂や網、地割れによる段差の可能性があり、網に傷がつくため、出漁できない。
漁師の収入の7~8割を占める石崎特産のナマコは今季、高水温の影響で記録的な不漁となっていた。「水温が下がる1月からに期待や」。祈るように言っていた漁師の声を思い出すと、やるせなさが募る。
首都圏や関西圏、金沢のすし店などで人気が高いトリガイ漁も見通しは立たない。1月中旬の解禁日を決める会議は延期になった。
●ロープ、網を回収
支所に所属する約30人の漁師は協力して、いかりを使って海底からロープや網を回収している。「きれいにしたと思っても、潮の流れでまたごみが流れてくるから、いたちごっこや」と嘆く竹内さんだが、「やれることをやっていくしかない」と作業に汗を流す。夏には石崎奉燈祭(いっさきほうとうまつり)で若衆が乱舞する漁師町。その活気が1日も早く戻ることを信じている。