[社説]陸自訓練場 動き急 地元目線で計画撤回を

 陸上自衛隊の訓練場建設を巡って、計画撤回を求める動きが地元うるま市で急速に広がり、大きな政治問題に発展しつつある。

 県議会の照屋守之副議長(うるま市区選出、無所属)は13日会見し、地元合意がないまま計画が進められていることを批判し、計画を撤回すべきだと表明した。

 翌14日には自治会代表や県議、市議らが共同代表を務める「自衛隊訓練場設置計画の断念を求める会準備会」が発足した。

 そして16日。うるま市の石川地区自治会長連絡協議会と同市区(定数4)選出の県議3人が玉城デニー知事を訪ね、「計画の断念を求める立場に立つこと」を要請した。

 こうした中、木原稔防衛相は17日、那覇市内で基地を抱える11市町村長と面談し、自治体から要望を聞いた。

 うるま市の中村正人市長は訓練場建設計画について「地元の声を真摯(しんし)に受け止め、よく検討していただきたい」と要請した。

 防衛相と個別に会談した玉城デニー知事は「白紙に戻して見直すよう」求めた。計画の撤回を求めたものだ。

 この件については自民党県連(仲田弘毅会長)からも計画の見直しを求める要請書が提出されている。

 木原防衛相は一連の要請を「重く受け止め、改めて検討していきたい」と答え計画の見直しを示唆した。

 だが土地取得を前提にした見直しであり、計画撤回には踏み込んでいない。地元との隔たりは依然として大きい。■    ■

 自治会長会の與古田ゆかり会長は、防衛省が実施した昨年12月22日の当初説明と今月11日の住民説明会で「訓練内容が全く違い、余計に怖い」と語る。

 当初の訓練計画を変更し、受け入れやすいようにソフト路線を前面に掲げたそのやり方が「造ってしまえば後は…」との下心を感じさせ、不信感を招いたのである。

 それが杞憂(きゆう)と言えないのは与那国町などの事例があるからだ。

 住民が反対しているのは、住宅地や教育施設に近接し、生活への影響が懸念されるからである。実は問題はそれだけにとどまらない。

 戦前の旧日本軍施設は戦後、本土でもその多くが米軍施設となった。復帰とともに沖縄に移駐した自衛隊は、その施設の多くを米軍から引き継いだ。

 過去のこうした事例は、米軍基地であれ自衛隊基地であれ、基地を新設することがいかに困難であるかを物語る。

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 「基地の整理縮小」や「基地の負担軽減」は、復帰以来変わらない県政の最重要課題である。

 今も沖縄には米軍専用施設の約7割が集中する。米軍は日米地位協定と同協定の合意議事録に基づいてさまざまな特権を与えられている。

 安全保障が住民の日常生活を脅かすという逆説。その上、新たに自衛隊の訓練場が新設されようとしているのである。

 他県ではまず起こり得ないような「過重負担」を認めるわけにはいかない。

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