福井は高級料理店レベルの食材が家庭に普通に並ぶ 石田屋二左衛門・水野直人社長、食の豊かさ強みに

石田屋二左衛門の水野直人社長

 北陸新幹線福井県内開業で、誘客の柱の一つとなるのが「食」であり、その一翼を担うのが地酒だ。福井県酒造組合会長で、県産食材を活用した飲食・酒販売施設「ESHIKOTO」を整備した、黒龍酒造の持ち株会社「石田屋二左衛門」(永平寺町)の水野直人社長(59)は「福井の食は魅力の塊。福井をもっと発信したい」と語る。

 ――福井の食の魅力は。

 「まずは食材や料理が豊富にあること。越前がにはもちろん、甘エビ、若狭ぐじ(アマダイ)など、海の幸だけでも四季折々で豊富。高級料理店の厳選食材になるようなものが、一般の家庭で普通に並ぶというポテンシャルがある。みんな当たり前と思っているが、県外の人はびっくりする」

 「越前和紙や漆器なども食に関わっている。生活の中に食が密接に溶け込んでいるのが福井。福井に来てもらい、体験する機会を増やすことが大切」

 ――食の魅力が体験できる場所の一つに「ESHIKOTO」がある。

 「元々酒を造るのが家業であり、父の影響を受けてワイナリーから多くを学んだ。30年ほど前の話だが、海外のワイナリーを巡った際、酒を飲むのではなく、風土を楽しむことだと感じた。それがESHIKOTOのきっかけ。ポテンシャルがある福井の食をもっと発信し、県外、海外の人と交流し、福井の風土を楽しんでもらえる場所をつくりたいと思った」

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 「(前田建設工業やアクアイグニス社などと)整備を進めているオーベルジュも、ターゲットはほぼ同じ。福井を初めて訪れる人や、県民の皆さんに利用してもらい、自然や禅など福井の魅力を感じてもらえれば」

 ――観光客に食の魅力を伝える方策は。

 「北陸3県で考えなくてはいけない。海外の人は1~2週間単位で旅行するし、一つの県だけでとどまるということはない。日本人の旅行も海外の人のような感覚になりつつある。北陸という広いエリアで何かを仕掛けていかないといけない」

 「敦賀延伸で、初めて福井、石川、富山を巡る旅ができる本当の意味での『北陸新幹線』になる。自分たちのようにオーベルジュを整備する蔵元なども北陸エリアでどんどん増えていくので、県域を越えた酒蔵ツアーを行うことなどを考えている」

 ――観光における課題は。

 「レンタカーが圧倒的に少ない。えちぜん鉄道など公共交通を使って、永平寺町内の駅で降りてもタクシーがなく、歩いてESHIKOTOまで来る人がいる。レンタサイクルがもっと普及してもいい」

 ◇みずの・なおと 1964年生まれ。東京農業大学卒。会社勤務を経て、1990年に家業の黒龍酒造に入社し、2005年から社長。19年に石田屋二左衛門を持ち株会社とする体制に移行、同社の社長にも就いた。18年から福井県酒造組合会長。

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